火山由来土から成る斜面における地震地すべりの発生リスクを評価するため、風化軽石を含む鋭敏粘土層の力学特性の把握とともに、こうした地質的特徴を有する斜面が関東地域でどのように分布しているかを広域的に把握することが本研究の目的である。 このために、研究期間の1年目および2年目では、既往の研究資料等に基づく基礎的な資料収集分析とともに現地調査を行った。例えば、1年目には、東日本大震災による被災斜面として、栃木県および同県と隣接する福島県白河市での地震地すべり斜面をいくつか巡検し、地質構造を明らかにするための詳細な室内試験およびサウンディング(簡易動的コーン貫入試験)を実施した。2年目には、これらの被災斜面での共通した傾向である、風化軽石に由来する軟弱かつ鋭敏な凝灰質粘土層の力学特性を調べるため、まず群馬県西部のある斜面において採取した同土の試料の室内土質試験を実施した。浅間山の噴火に由来する軽石から成る層とその風化した軟弱粘土層、ならびにそれらを包含する主体としてのローム層それぞれの力学特性および物理特性を調べ、風化軽石を多く含む軟弱粘土層では自然含水比が液性限界に極めて近いあるいはやや大きいことが鋭敏な力学特性を呈する原因となっていることなどを確認した。 2年目の後半から本年度にかけては、広域的な分析として、東日本大震災時に栃木県の中東部に位置する喜連川丘陵において発生した地すべりを事例として、広域的に得られる地形・地質的な素因(具体的には、斜面を構成する地層の中にローム層あるいは風化軽石に関連する地層が含まれているか否か等)について分析することにより、それらと地すべりとの相関性を把握するための手順を検討した。このような手法を別の地域に適用する際の留意点を調べるため、試行的に南関東のある地域における同様の検討を試みた。
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