研究課題/領域番号 |
24560602
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岸田 潔 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20243066)
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研究分担者 |
澤田 淳 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (30421639)
安原 英明 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (70432797)
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キーワード | 岩盤力学 / 岩盤水理 / 地下水物質移行 / THMC連成 / ヒーリング現象 / 圧力融解 / 放射性廃棄物地層処分 |
研究概要 |
本研究は,エネルギー生成後の副産物である放射性廃棄物の地層処分事業の安全性能評価のための基礎となる種々の応力・温度条件下での単一不連続面の水理学特性および力学特性を解明し,物質移行パラメータの同定(温度-化学-水理連成モデルの構築)およびヒーリング現象を包含した力学モデル(温度-化学-力学連成モデル)の構築を目指すものである.今年度の主な研究成果は,以下のとおりです. 「不連続面の形状計測と温度-化学連成による不連続面構造評価モデルの構築」では,対象とした岩塩供試体の不連続面の計測をレーザー変位計で行い,繰返しSHS型一面せん断試験を実施した.岩塩は透明度が高く,一方,繰返しせん断試験に用いることでマイクロクラックなどが生じ,レーザーでの計測が困難であったが,計測表面をコーティングすることにより,計測を可能とした.SHS型一面せん断試験の結果と併せて,せん断および応力保持による不連続面構造の変化とヒーリング現象に関する検討を行った.また,加温実験に関しては,速度・状態依存摩擦則の適用を試み,加温による強度回復の影響について検討を行った. 「透水挙動の評価と物質移行パラメータの同定」では,接触した状態での花崗岩不連続面の形状と開口幅分布の抽出をマイクロフォーカスX線CTで行い,それらの情報を用いて浸透シミュレーションを実施した. 「SHS型せん断-透水試験の実施とヒーリング現象を考慮した力学挙動モデルの構築」では,保持に伴う強度回復は構造回復に起因するものであると考え,修正Cam Clayモデルに状態変数を導入して,ヒーリング現象のシミュレーションを行った.Deiterichの対数線形モデルと関連付けて試解析を行い,強度回復を表現することが可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「不連続面の形状計測と温度-化学連成による不連続面構造評価モデルの構築」では,当初予定していた岩塩不連続面での不連続面の計測およびSHS型一面せん断試験は,予定より早く(当初は平成26年度実施予定)終了し,最終年度は結果の整理・考察を行うことが可能となった.計画はしていなかったが,「SHS型せん断-透水試験の実施とヒーリング現象を考慮した力学挙動モデルの構築」で検討している構成モデルを本研究でも適応できるか検討を進めていきたい. 「透水挙動の評価と物質移行パラメータの同定」では,予定していなかったがマイクロフォーカスX線CTの改良と加温・拘束条件下でのCT撮影が可能な三軸セルの開発を行い,実験化のな状況となった.当初は,不連続面個々にレーザー計測を行い,不連続面の構造と接触状態の評価から物質移行パラメータの同定を行う予定であったが,これに加えて,加温・拘束状態で花崗岩不連続面の構造の評価が可能となったことは,研究が飛躍的に深化する可能性ができたものと考える.本研究では,平成25年度にマイクロフォーカスX線CTでの花崗岩不連続面の形状および開口幅分布の同定,それらを用いた浸透シミュレーションの実施ができたことは,物質移行特性の同定がより精緻に進められることが可能となる.当初の計画以上の成果が得られるものと確信している. 「SHS型せん断-透水試験の実施とヒーリング現象を考慮した力学挙動モデルの構築」は,当初計画通り進捗である.
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今後の研究の推進方策 |
「不連続面の形状計測と温度-化学連成による不連続面構造評価モデルの構築」は,本申請で一面せん断試験の加温装置の導入を行っている.初年度に導入を行い,実験を行い,一定の成果が得られている.ただし,加温装置が不安定な面もあり,平成25年度に改良を実施した.改良は十分ではなく,今後引き続き検討・対応する必要はある.改良が終了した段階で,その装置を用いて実験を実施する.また,岩塩不連続面のSHS型一面せん断試験は終了しており,それらの結果を用い,速度・状態依存摩擦則の適用,構造回復を考慮した構成モデルの適用を実施する予定である. 「透水挙動の評価と物質移行パラメータの同定」では,マイクロフォーカスX線CTでの不連続面構造とレーザー変位計で計測した不連続面構造の比較を実施し,これら二つの情報を統合するフィルタリングの作成の可能性を試みる.また,加温・拘束圧下での長期透水試験を開始する. 「SHS型せん断-透水試験の実施とヒーリング現象を考慮した力学挙動モデルの構築」は,継続的な実験の実施と構成モデルの構築・改良を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に導入した加温型岩石一面せん断試験装置において,加温時に温度が一定に保てない状況である.今年度は,その原因を調べ対策を検討中である.検討により,物品を購入する予定であったが,試作品の作製が間に合わず,次年度使用額が生じた. 次年度予定の物品費にこれらも加え,安定した加温状況で実験が実施できるように改良する.具体的には,せん断箱にバンドヒーターを装着する,併せて,費用に余裕があれば,チューブに断熱材を適用する.
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