大水深海域における関西国際空港島建設に伴う更新統地盤の変形挙動を解析するにあたり,過剰間隙水圧の透水層内伝播問題が結果に大きく影響することがわかっている。二次元平面ひずみ条件下での大断面解析によって長期沈下などの変形問題は取り扱えることを示してきたが,奥行き方向の水分移動を考慮しなければ現実的な解を得ることが出来ないことから,弾粘塑性有限要素プログラムの三次元化を行い,200mの離隔で建設された2つの埋立人工島の相互作用を含めた三次元解析を行う体制を確立した。プログラムの妥当性を検証するために,既往の二次元解析で対象とした断面を単位奥行きの三次元有限要素メッシュに分割し,埋立初期から現在に至る時刻歴で解析を行った。その結果,各更新統粘土層の沈下~時間関係は二次元解析結果と一致した。一方,埋立に伴う過剰間隙水圧については,埋立直後の水圧発生量が二次元解析と比べてやや低くなり,その後の過剰間隙水圧消散過程において長期的には同一値に収束する傾向を示した。この要因として,二次元解析で用いている構成モデルが平面ひずみ条件を付与した定式化に基づいており,K0値の導出過程,破壊規準の表記が異なるなど,完全に同一ではないことが影響している可能性が示唆されている。しかしながら,当初の目的であった大断面の三次元解析が可能であること,またほぼ定量的に妥当な結果が得られることが確認できた。一方で,現在の計算機の環境では奥行き方向にメッシュを増やしていくことによる大容量化に対応できておらず,処理の高速化と大容量計算可能なハード環境が必要となることも合わせてわかった。
|