研究課題
東日本大震災によって発生した福島原子力発電所からの放射性物質の拡散は,いまだに復興の大きな障壁となっている.大気に放出された放射性セシウムは雨水に溶解し,イオンの形で地盤に降り注ぎ,表層5cmほどの領域の地盤以沈着していると言われている.表層地盤の除染が有効な手段であるものの,広範囲に拡散しているため,表土量だけでも膨大な体積となる.この様な汚染土砂を含有物質の漏出なく,安定した形で管理することが求められている.本研究では,汚染物質の移動挙動を考慮した締固め管理手法の確立を目指した.まずは,締固め施工による効果を明らかにするために,土/水/空気連成解析を用いて締固めシミュレーションを行った.その結果,室内締固め試験にみられる最適含水比,最大乾燥密度を表現できるとともに,その乾燥側,湿潤側で内部の乾燥密度や含水状態の分布傾向が異なることが分かった.また,これまで経験的に知られていた,せん断強度や圧縮性といった力学特性と締固め曲線の関係を表現することができ,その発現メカニズムを明らかにした.物質移動を考慮するためには,この局所化の影響による計算誤差を小さくする必要がある.そこで,それまでの土/水/空気/溶解物質連成解析に用いていた空間離散化手法を修正し,アイソパラメトリック要素を導入した.その結果,解析精度が向上し,濃度フラックスが卓越する条件での解析の不安定化を抑制できるようになった.しかしながら,外力による物質移動は降雨浸透などの水理境界条件変動に比べるとかなり小さいことが明らかとなった.そこで,処分場などで遮水工法として用いられている,キャピラリーバリアシステムの性能に及ぼす影響因子についても,本研究で開発した解析コードを用いて検討した.その結果,キャピラリーバリア性能に及ぼす傾斜角や層厚など影響を定量的に表現することができた.
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