熱水貯蔵システムや高レベル放射線廃棄物の地層処分では地下岩盤空洞の長期性能評価が重要な課題となる.これらの空洞では周辺岩盤に非定常の温度分布が生じ,熱応力も発生する.結晶質性の硬岩では不連続面が水理学・力学的な弱面になるため,これらの透水・力学挙動を把握することは重要な課題の一つである.申請者は高温・高圧下における結晶質岩不連続面の透水挙動を定量的に評価し,鉱物の溶解作用が透水性に及ぼす影響を明らかにした.本研究では,これらの成果をさらに発展させ,不連続面への力学作用が透水挙動や鉱物溶解作用に及ぼす影響について定量的に評価し,透水・力学特性変化メカニズムの解明を行なった. 本年度は特に岩石の連続透水せん断試験を実施し,不連続面の力学特性について検討した.熱環境における不連続面の変形挙動評価を目的として,持続載荷連続透水・せん断実験を実施した.試料は軸に対し30度傾斜したSaw-cut不連続面を有する直径5高さ10 cmのべレア砂岩供試体を用い,三軸セル内で拘束圧7.5 MPa,温度摂氏90度に保持した状態で連続的に透水試験を実施し,透水性の変化を測定した.また,実験開始時と一定期間経過後において,軸差応力を増加させ不連続面にせん断変位を生じさせることにより,軸差応力-軸ひずみ関係を得,弾性係数の変化を評価した.120日間の持続載荷では,初期剛性および最終剛性が10 %~30 %増加していた.また,透過率は初期には低下傾向を示し,次第に変化が小さくなった.その間の透過水中の元素濃度の経時変化は小さかった.
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