炭酸カルシウム結晶析出法とは,炭酸カルシウム(CaCO3)を塩酸(HCl)水溶液に添加させることによって塩化カルシウム(CaCO2)水溶液を製造し,予め炭酸ナトリウム(Na2CO3)を混ぜ合わせておいた土試料にCaCl2水溶液を混ぜ合わせることによりCaCO3結晶を析出させ,土粒子同士を化学的に固結させる土質改良工法である.カキやホタテなどの貝殻の主成分は炭酸カルシウムであることから,貝殻を塩酸に添加させることでCaCl2水溶液が簡単に製造できる.最終年度では,純度の高い市販のCaCl2水溶液を使って土中にCaCO3結晶を析出させ,その土に対して針貫入試験を実施し,土の強度発現効果を確認した.この結果を踏まえて,カキ殻からCaCl2水溶液を作製し,同様の実験を行った.以下に本研究で得られた成果をまとめる. 【成果1】Na2CO3添加率0~10%まではほとんど貫入抵抗力が得られず強度発現効果は認められなかった.しかしながら20%以降は添加率の増加に伴って強度が著しく上昇した.添加率20%以上で目標強度1000kPaを上回っていることから,カキ殻を用いた実験では,Na2CO3添加率20%から使用することにした.市販の塩化カルシウムの場合と同様に,添加率の増加とともにカキ殻による実験も一定の強度発現効果が見られた. 【成果2】Na2CO3添加率30%の供試体に対して,先行圧縮荷重1256kPaから荷重314,157,78.5kPaと,除荷させた後,もしくは除荷させないで針貫入試験を実施した.荷重78.5kPaまで除荷させた場合,CaCl2水溶液を浸透させると強度は発現するものの,十分とは言えない.しかし,除荷後の荷重が157kPa以上であれば,目標強度を十分に確保することができる.
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