本研究は自然由来の微生物を用い,カルシウム分に廃棄された牡蠣殻を用いることで環境負荷の少ない地盤改良工法の開発を目指している. 25年度の結果から,同一のビーチロックから採取した株でも,ウレアーゼ活性に違いがあったため,再び沖縄本島および石垣島からビーチロックを採取し,菌株の培養を行った.しかし,培養した菌株のウレアーゼ活性を調べた結果,どれもウレアーゼ活性を示さず,ウレアーゼ活性菌を培養できなかった.このことからビーチロック内に菌株が存在しないか死滅している可能性があり,菌株の採取の際には注意が必要であることがわかった. これまでに採取した菌株により改良した試料の一軸圧縮試験を行ったところ,一部の菌株では,試料作製条件によってはSporosarcina pasteurii(SP)を用いた試料と同等な圧縮強度を示したことから,これらがSP株に代わる改良効果を持った日本に存在する菌株であることが期待できる.また,注入回数,カルシウム分の量を増やすことによって強度が高くなることを確認したが,使用する菌株によっては塩濃度が高くなることで菌株の成長が阻害されることが分かった.さらにカルシウム分に牡蠣殻を用いた場合でも,菌株によっては同様な改良効果が表れ,地盤改良工法への適用性も一部認められた. 菌株の注入方法として,菌株を付着させた寒天培地を細かくして,土と混合させた後,容器に詰め,上方よりインジェクション液を散布する方法で改良効果について検討した.結果として,数%程度の炭酸カルシウムが析出され,強度も1.3倍程度まで増加したが,室内要素試験に比べ,低い値となった.このことより菌株を付着させた寒天培地を用いた場合は菌の培養により時間を要すると考えられ,地盤改良工法に用いる場合には適切な時間設定が必要であると考えられる.
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