海岸鉄道は我が国の物流や生活を支える重要な交通機関である.近年,護岸前面の砂浜の消失により波浪の影響を受ける鉄道が多く,とくに北海道では2015年1月の高波により被災した日高本線の復旧が進まず地域社会に大きな影響を及ぼしている.また2011東日本大震災では多くの海岸鉄道が津波被害を受け,その復旧のためにも津波に対する鉄道の安全度評価が重要となる.本研究では,こうした要請に応えるため異常海象に対する海岸鉄道の総合的なオペレーション手法を提案し,利用者の安全・安心をもたらすことを目的としている. 研究最終年度である2014年度には, 護岸の直背後に位置する鉄道を対象として,縮尺1/40の越波実験を行って越波水の打ち込み特性を把握した上で,縮尺1/4の大型実験を行って道床バラストの移動状況を把握した.これらの結果に基づいて現地における被災原因を明らかにするとともに、対策工の効果について比較検討した.さらに波浪による海岸盛土の侵食について現地の状況を分析するとともに,水理模型実験により侵食の発生メカニズムを明らかにした.津波に関しては,箱型車両に働く流体力について一般的な知見を得た上で,海面から軌道までの高さを考慮した津波力の算定式を提案した。 本研究においては,これまでに海岸鉄道H線のK駅付近で発生した高波による運行障害事例(2006年11月発生)や海岸鉄道H線のO駅付近で発生した高波による被災事例(2004年7月発生)等について分析してきた.こうした事例に対して高波による危険度を定量的に表わすとともに,現地で適用可能な具体的な対策を提案することができた.また津波に対しては,車両や橋梁に働く津波力の算定法を示すことにより,その危険度の評価を可能とした.
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