研究課題/領域番号 |
24560620
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
戸田 祐嗣 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60301173)
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研究分担者 |
田代 喬 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (30391618)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 河川植生 / 樹林化 / 数値解析モデル / 航空写真分析 / 単独種異常繁茂 |
研究概要 |
本年度は,過去40~50年間の河川の植生変化に関する航空写真分析を実施した.研究対象河川として矢作川下流域,天竜川下流域を選定し,航空写真の輝度,色度分析より,草本域,木本域,裸地域,水域,人工地を区分した.異なる年代間の土地被覆情報を比較して,草本類,木本類の侵入・拡大率,破壊率を算定した.航空写真分析の結果,天竜川,矢作川では経年的にヤナギに代表される木本類の生息域が拡大していること,樹林生息域の拡大は低水路幅の変化や砂州の発生形態と相関がみられることが明らかになった. 河道の流れ,地形変化,草本・木本別の植生動態を統合して解析する数値計算モデルを開発した.草本,木本類の日射をめぐる群落間競争関係を定式化し,モデル中に組み込んだ.また,植生生息域の平面的な拡大について,拡散型の項によってモデル化した.開発されたモデルを用いて矢作川下流域の河道条件下での地形変化,植生動態に関する数値計算を実施し,航空写真分析結果と比較することにより,モデルの検証を行った.検証された数値解析モデルを用いて,川幅,流砂量などの河道条件の変化が,河道地形,植生繁茂状況に与える影響について検討を行った.解析の結果,河道内の砂州モード(単列砂州,複列砂州)の違いが,植生の繁茂状況に大きな影響を与え,単列砂州の発生条件下の方が,複列砂州より河道内の樹林化が進行することが明らかになった. また,より多くの河川での植生動態の遷移を把握するために,中部地方の河川を中心に過去の航空写真を収集し,河道,植生状態の変化の分析を実施中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画として1年目に実施する予定であった実河川での植生動態の把握,数値解析モデルの開発については,それぞれについて成果が上がっており,順調に進捗している.植生種のグループ化に向けては,矢作川,天竜川以外の多くの河川での調査データに基づいた分析が必要であり,その作業に着手し,部分的に成果が上がりつつある状況である.以上のように,当初の研究計画に沿っておおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として,より多くの河川での植生動態データを充実させ,単独種異常繁茂が生じている河川に共通する植生動態メカニズムを明らかにするとともに,数値解析モデルの汎用性,一般性を高めていく.その成果を踏まえて,最終的には流量,流砂量の変化や人為的な河道改修が河道内の植生動態に与える影響を抽出し,実河川における単独植生群落が異常繁茂する条件を明らかにしていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に実施した研究成果について,平成25年3月に「第4回水と洪水管理に関する国際会議(バングラディッシュ)」において口頭発表を予定していたが,会議開催期間の1週間ほど前にバングラディッシュ国内で暴動が発生し,会議が延期となった.その結果,会議出席のための渡航費が繰り越しとなっている.当該会議の新しい日程はまだ確定していないが,参加可能な日程ならば参加し,成果発表をする.もし参加が不可能な日程であるならば,他の国際会議にて成果発表する予定である.繰り越し分以外の平成25年度分の助成金については,当初の計画通り主に現地調査費用,調査旅費に使用する予定である.
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