研究課題/領域番号 |
24560620
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
戸田 祐嗣 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60301173)
|
研究分担者 |
田代 喬 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (30391618)
|
キーワード | 河川植生 / 樹林化 / 数値解析モデル / 航空写真分析 / 単独種異常繁茂 |
研究概要 |
本年度は,中部地方にある8つの一級水系の河川において,過去40~50年間の河川の植生変化に関する航空写真分析を実施した.分析対象とした河川は,天竜川,豊川,矢作川,庄内川,木曽川,長良川,揖斐川,雲出川である.航空写真分析の結果,中部地方の一級水系河川の樹林動態について,樹木の侵入・破壊の程度や樹林化の進行速度に基づいて4つのタイプに体系的に分類できた.また,昨年度より開発を開始した,河道の流れ,地形変化,草本・木本別の植生動態を統合して解析する数値計算モデルの開発に継続的に取り組んだ.草本,木本類の日射をめぐる群落間競争関係を定式化し,モデル中に組み込んだ.また,植生生息域の平面的な拡大について,拡散型の項によってモデル化した.開発されたモデルを用いて川幅,流砂量などの河道条件の変化が,河道地形,植生繁茂状況に与える影響について検討を行った.解析の結果,河道内の砂州モード(単列砂州,複列砂州)の違いが,植生の繁茂状況に大きな影響を与え,単列砂州の発生条件下の方が,複列砂州より河道内の樹林化が進行することが明らかになった.さらに今年度は,樹林化した河川における効果的で効率的な植生の伐採,掘削方法について,数値解析モデルを用いた検討を行った.治水面で効果的な伐採,掘削箇所と,砂州形状を維持するために効果的な伐採方法とが異なっていることが示された.現在,樹林化に影響を与える要因のうち,河道内の土砂採取の影響と,上流からの供給土砂量の減少が与える影響について,現地データおよび数値解析により検討を行っている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画として2年目までに実施する予定であった,実河川での植生動態の把握,数値解析モデルの開発について,順調に成果が上がっている.また,本研究で開発した数値解析モデルを用いて,実河川で樹林化が生じた要因分析,樹林繁茂抑制の観点からみた効果的・効率的な樹林管理(伐採・掘削箇所の選定方法)などについても,部分的に成果が上がっており,おおむね順調に進展している.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策として,もうすでに一部研究に着手している,効果的で効率的な樹林管理手法に関する数値解析を行う予定である.また,河川ごとの樹林化要因の違いについても更なる検討を行い,樹林化現象の類型化とそれに基づく効果的管理手法の提案へと研究を推進していく予定である.
|