研究課題
基盤研究(C)
初年度は,東日本大震災津波による福島第一原発からの放射性核種海洋漏洩事故の事後評価に資するべく,東北・関東海洋モデリングを構築し,詳細なアセスメントを実施した.モデルはJCOPE2を最外側境界条件とし,領域海洋モデルROMSを用いた2段階ネスティングによるダウンスケーリングをベースとした.MPIによる並列計算を用い,大型計算機256コアを使用した.アセスメントは震災前後の約1年分を行ない,まずは観測データとの比較を通じて平均流動構造(特にsubtidal成分),EKE分布などの時空間変動を評価した.再現性の確認後,福島第一原発をpoint sourceとしたpassive tracer濃度のオイラー的挙動,および河口や海岸をソースとした濃度のオイラー的追跡を実施した.放射性物質フラックスの湧き出し条件としては,ヨウ素/セシウム比を用いた方法(Tsumune et al., 2011)を用いた.濃度や粒子分布の平均像,分散,PDFなどの3次元構造を評価し,ソースからの物質分散の時空間変動を高精度に把握することに成功した.本手法の再現性は極めて高く,H25~H26年度は科研費新学術領域研究・公募研究(課題番号25110508)の枠組みで,さらなるダウンスケーリングを通じた沿岸域の再分散過程に主眼をおいた解析を実施する予定である.なお,本助成金研究におけるH25,H26年度実施予定内容への準備として,南カリフォルニア湾における波の影響を考慮した砕波帯-陸棚相互作用,黒潮続流域フロント部におけるサブメソスケール乱流構造,瀬戸内海全域モデルの構築などについても鋭意モデリングを行なっており,それぞれH25年度以降の大きな飛躍が見込まれる.
1: 当初の計画以上に進展している
福島沖アセスメントに関しては,研究進捗時に生じた軽微な変更を除くと当初の目的を達成できた.本研究に対する対外的な評価は高く,例えば,科研費新学術領域研究「福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態に関する学際的研究(領域番号2409)」への公募研究を通じての参加が内定している.また,H25,26年度実施予定項目である南カリフォルニア湾における砕波帯-陸棚相互作用に関する研究,瀬戸内海全域を対象とした高解像度モデリングについても着手済みであり,速報的に対外発表も行なっている.さらに,当初計画にはなかった黒潮続流域フロント部におけるサブメソスケール乱流に関する解析も実施し,科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業「黒潮と内部波が影響する沿岸域における生物多様性および生物群集のマルチスケール変動に関する評価・予測技術の創出」の分担研究者に招聘されるなど,海洋学分野における対外的な高評価を獲得することに成功している.
ほぼ当初計画通り,あるいは前倒しをして推進する.
ほぼ当初計画通りの予定であるが,成果発表や情報収集のための旅費および学会参加費などを若干多めに使用するよう修正する予定である.
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Jornal of Physical Oceanography
巻: 42 ページ: 62-77
doi: 10.1175/2011JPO4597.1
Jornal of Geophysical Research - Oceans
巻: 117 ページ: C07003
doi:10.1029/2012JC008008
土木学会論文集B2(海岸工学)
巻: 68 ページ: 931-935
10.2208/kaigan.68.I_931
巻: 68 ページ: 426-430
10.2208/kaigan.68.I_426
巻: 68 ページ: 436-440
10.2208/kaigan.68.I_436
巻: 68 ページ: 441-445
10.2208/kaigan.68.I_441
巻: 68 ページ: 36-40
10.2208/kaigan.68.I_36
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