平成26年度(最終年度)は,1.徳島県「六丁の森」(一級河川・那賀川の右支川・古屋谷川上流)での現地水文観測と観測値への地表面流分離直列2段タンクモデルを組み込んだ分布型流出モデルの適用による解析手法の妥当性の検討,2.平成23年台風12号豪雨で和歌山県富田川流域で発生した大規模斜面崩壊事例へのモデル適用による解析手法の汎用性の検討を行った. 「六丁の森」での水文観測・流出モデルの適用については,水文観測を平成25年冬から観測を開始し,平成27年秋までの雨量,水位,ならびに地下水位観測を行った.しかし平成26年8月に相次いで来襲した台風12号,台風11号による大出水(那賀川の戦後最大流量を更新する大出水)により,水位計が流失してしまったため,流出解析を行うことができなかった.その中でも大雨時における地下水位の変動を捉えられる事は確認できたので,今後も調査・観測を継続してモデルで推定される地中水量の経時変化の妥当性について検討を続ける予定である. 和歌山県を流れる二級河川・富田川で発生した平成23年台風12号による大規模斜面崩壊(田辺市中辺路町真砂)へのモデル適用については,これまでに適用した一級河川・那賀川上流域や一級河川・佐波川中流域で発生した斜面崩壊と同様の良好な結果を得ることができた.具体的には真砂地区で斜面崩壊が発生した時刻における当地区の推定地中水量は約100mmで,流域内でも特に大きな値であったことと,全地中水量に占める地下水貯留量が約50%と推定され,深層崩壊が発生しやすい状況にあったことを地中水の点から定量的に評価することができた.以上の結果は他流域での適用結果と同じであり,地表面流分離直列2段タンクモデルを組み込んだ分布型流出モデルによる斜面崩壊リスク評価の汎用性を裏付ける物であるという結論に至った.
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