研究課題/領域番号 |
24560625
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
石塚 正秀 香川大学, 工学部, 准教授 (50324992)
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研究分担者 |
紀伊 雅敦 香川大学, 工学部, 准教授 (20426266)
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キーワード | 河川環境 / 負荷量解析 / 瀬戸内海 / 貧栄養化 / ノリ色落ち / 人口変化 / 農村活動 / TPP |
研究概要 |
1)水質調査結果および海域調査結果の考察により、河川水の窒素の形態は溶存態無機窒素(DIN)が大部分を占めているのに対して、海域では溶存態有機態窒素(DON)が63%と大きい結果が得られた。また、リンの形態は、河川ごとに特徴が異なっていたが、千種川と加古川では懸濁態リン(PP)が50%以上を占めているのに対して、海域では、約50%がPPである結果が得られた。 2)経済モデルによるTN負荷量の変化に対する漁業被害のリスク評価により、漁業者の収入を最大化するCOD負荷量は75 t/dayであり、TN負荷量は、65 t/dayである結果が得られた。これらの負荷量は、現在の負荷量よりも大きな値であることから、環境政策に対する一つの知見を得ることができた。 3)GISを用いた負荷量解析の結果、播磨灘流域圏全体で、TN/TP比は25年間で増加傾向にあることがわかった。一方、土地系からの負荷量の30年間で緩やかに減少の傾向があることが分かった。下水処理における汚濁除去率は、姫路市、神戸市、加古川市において実施することでより、効率的な負荷量管理を行うことができる結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
播磨灘流域における河川調査を毎月実施し、栄養塩形態の特徴を明らかにすることができた。また、GISを用いた発生負荷量解析を行い、生活系、土地系からの負荷量を算定することができた。この結果を用いて、下水道整備範囲を考慮した発生負荷量の抑制効果を示し、漁獲量が多かった1985年頃の負荷量に戻すために必要な下水処理効率を明らかにした。また、経済評価モデルを用いて、赤潮の発生件数と漁獲量の長期的な推移を比較して、赤潮発生とノリ色落ちを回避するための最適なリスク計算を行うことができた。一方、都市・農村間における活動予測については、十分な成果を得ることができていなかった。その理由は、河川水質調査の考察に予想以上の時間を要したこととリスク計算に必要な過去の水産データを整理することに時間を要したことが挙げられる。平成26年度は、3年間の最終年度であることから、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)、耕作放棄地、都市と農村間の人口変化などの、社会活動要因のデータを準備し、解析を進めて、陸・川・海を含めた水質管理策の評価にむけた総合的な解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
論文作成:1)昨年度、トルコの国際会議において発表した2件の研究を発展させ、国際学術論文に投稿。2)河川水質の栄養塩形態に関する成果を国際学術論文に投稿。3)TPP・耕作放棄地の対策などの農業政策に関するシナリオモデルを用いた負荷量変化に関する論文を土木学会水工学論文に投稿。 データ解析:1)都市・農業活動をモデル化し、都市・農村システムにおける社会構造変化が窒素・リンの発生負荷量に与える影響を定量的に評価する。モデルの再現性が低い場合にはノンパラメトリック手法を活用するなど柔軟な分析手法を検討し、研究目的が達成できるように手法の変更を行う。将来変化についてはできるだけシナリオ数を多くしたいと考えているが、時間的な 制限が生じた場合は、IPSSが公開している人口データ等を用いて都市・農村活動モデルに反映させる予定である。2)平成24年度に採取した河川水の栄養塩形態の分析結果を用いて、河川栄養塩と海域栄養塩との関係をより詳細に明らかにする。 課題:社会基盤データ解析で得た負荷量解析用基礎データを用いて、負荷量の空間分布を考慮した河川水質シミュレーションを行う予定であるが、非定常性の考察は年々変動が大きいことから、一般化された平均場を対象とした考察にとどめる可能性がある。 次年度の研究費の使用計画:2014年9月に米国チェサピーク湾プロジェクトおよびイタリア国ナポリにおける地中海環境の視察を行い、世界有数の閉鎖性内湾における環境政策と瀬戸内海との比較について資料・情報収集を行う予定。また、2015年3月に土木学会水工学講演会において成果発表を行う予定。また、研究協力者の千葉大学丸山博士との打合せを1回実施する予定。また、論文投稿の際の英文校正費用を謝金として計上する。水質分析に関わる消耗品を購入予定。負荷量解析に必要な基礎データ・ソフトウエアを購入予定。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年10月にトルコで開催された国際会議(エメックス閉鎖性海域の環境管理会議)においてポスター発表を行った際に、チェサピーク湾管理財団の研究員と研究内容についてディスカッションを行った。チェサピーク湾では、世界でも先駆的に湾の環境プログラムを多数実施しており、陸域からの窒素・リンの排出管理について実際に現地を訪問して勉強することが重要という考えに至った。そこで、平成26年度の旅費に充てるために、当初予定していた物品購入費を削減することにした。 2013年10月に参加した国際会議において、ポスター発表の際にディスカッションしたチェサピーク湾の研究員の案内で、2014年9月に米国チェサピーク湾プロジェクトを視察する予定である。チェサピーク湾は瀬戸内海と同様に先駆的な環境政策を実施しており、本研究を最終的に取りまとめるにあたって有益な情報が得られると考えられる。また、イタリア国ナポリにおける地中海環境の視察を行い、世界有数の閉鎖性内湾における環境政策と瀬戸内海との比較について資料・情報収集を行う予定。また、2015年3月に土木学会水工学講演会において成果発表を行う予定。また、研究協力者の千葉大学丸山博士との打合せを1回実施する予定。また、論文投稿の際の英文校正費用を謝金として計上する。水質分析に関わる消耗品を購入予定。負荷量解析に必要な基礎データ・ソフトウエアを購入予定。
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