研究課題/領域番号 |
24560628
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高橋 正行 日本大学, 理工学部, 講師 (10318363)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 階段状水路 / 空気混入水流 / エネルギー損失 / Skimming flow / 水深 / 流速 |
研究概要 |
急傾斜地の水路や堰・ダムを流下する高速流を傾斜面上で減勢させる方法として階段状水路の利用は有効である.階段状水路のskimming flowでは,水路に流入した流れは平坦な傾斜水路よりも短い流下距離で,水面から空気が混入しはじめる.この位置をinception point(空気混入開始位置)と呼び,その下流側では空気混入流となる.この空気混入流は不等流区間を経て,各ステップ上の水深と流速が繰り返し同じ大きさになる擬似等流状態となる.階段状水路の水工設計のためには,擬似等流区間ならびに不等流区間の空気混入流特性(空気混入流水深,流速,エネルギー水頭)を知ることが重要である. 階段状水路の空気混入不等流の水面形は,従来解析的には求められないと考えられていた. 本年度は,水路傾斜角度θ=18°~55°の階段状水路に対して,設計流量のときに推奨されている相対ステップ高さS/dc≧0.2 (S:ステップ高さ,dc:限界水深[dc=(qw2/g)1/3; g:重力加速度; qw:水の単位幅流量])のskimming flowの空気混入不等流を対象に,解析的に空気混入流の水面形を求める方法を開発し,その妥当性を水路傾斜角度θ = 55°の実験およびBung(2011)のθ = 18°と27°の実験によって確かめた.また,空気混入不等流中の空気混入率分布式および流速分布式を明確に示した.これによって,空気混入不等流区間の空気混入率C,空気混入不等流の流速u,空気混入流水深,およびエネルギー水頭などの特性量の算定が可能になり,水路傾斜角度θおよび相対ステップ高さS/dcが空気混入不等流の特性量に与える影響が明らかにされた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究実施計画予定にしたがい,水路傾斜角度θ=55°と30°の階段状水路における空気混入率Cと流速uを計測し,空気混入水流の水理特性を明らかにした.また,θ=18°と27°の実験データを最近発表されたBung(2011)の論文から抽出し,新たに開発した空気混入流の水面形計算法の適用性を確認することができた.すなわち,水路傾斜角度θ=18°から55°の広範囲な水路傾斜角度に対して,提案した空気混入水流の水面形計算法が適用できることを確認できた.しかしながら,Bung(2011)の実験は相対ステップ高さS/dc(S:ステップ高さ,dc:限界水深[dc=(qw2/g)1/3; g:重力加速度; qw:水の単位幅流量])の範囲が狭いため,相対ステップ高さを系統的に変化させた実験を実施する必要は残されている.
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今後の研究の推進方策 |
Bung(2011)の測定値を用いて水路傾斜角度θ=18°と27°に対して,本解析手法の適用性の検証を実施したが,相対ステップ高さS/dc(S:ステップ一段の高さ,dc:限界水深)が小さい場合(0.1程度)の検討はなされておらず,相対ステップ高さS/dcが小さい場合について追加実験する必要が生じた.これにともない,ステップ高さを小さくするための,模型の基本設計を平成24年度中に実施した.平成25年度は,水路傾斜角度θ=19°と30°の相対ステップ高さS/dcが小さい場合の実験的検討を実施する.
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次年度の研究費の使用計画 |
水路傾斜角度が空気混入流特性におよぼす影響を明らかにするため,広範囲な相対ステップ高さS/dcを対象に水路傾斜角度θ=19°の空気混入率Cおよび流速uの測定を行うために必要な模型作成費用の一部に使用する.
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