本研究は、世界各地で発生する大規模な洪水を対象に、流域全体で降雨流出から洪水氾濫までを一体として予測することを目的とした。また本研究で用いる降雨流出氾濫モデル(RRIモデル)をもとに、河川を流れる水や平野部を氾濫する水が、いつ・どこに降った雨で構成されているかを分析し、大規模洪水の要因を明らかにすると共に、広域の洪水予測精度を向上させることを研究の目的とした。 研究最終年度にあたる本年度は、地下水の流動も再現して長期連続の流出・氾濫予測精度を向上させるようRRIモデルを改良するとともに、時空間期限追跡手法(T-SAS手法)についても地下水・表流水のやりとりを反映できるよう手法の一般化を図った。また本課題の研究成果を論文に取りまとめ、開発したプログラムの公開手続きやマニュアル整備を進めた。 本研究期間全体を通して、(1)地下水や蒸発散の影響も考慮しながら長期連続で降雨流出から洪水氾濫までを一体的に予測するRRIモデルの開発が進み、タイ・チャオプラヤ川流域におけるリアルタイムの浸水予測を始め、様々な形でモデルの実用化や他の研究への応用化が進んだ。(2)またRRIモデルで再現する河川流出や洪水氾濫の時空間起源を分析する手法(T-SAS手法)の開発が進み、降雨の時空間起源や流出経路の観点から流出や氾濫水の成分を推定できるようになった。(3)さらに2011年タイ洪水を中心に、RRIモデルやT-SAS手法の適用を通じて、降雨の変動が流出や氾濫に及ぼしている影響や、氾濫原に降った雨が流域全体の氾濫に及ぼしている影響など、大規模洪水現象の解明と予測に関する研究が進展した。
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