研究課題/領域番号 |
24560634
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
深堀 清隆 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (70292646)
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キーワード | 街路景観 |
研究概要 |
本年度は交付申請書の実施計画記載事項に関して、①街路での歩きやすさに関するアンケート実験、②仮想的テリトリーに関わる影響要因のモデル化、③仮想的環境による実験手法の導入を行った。①については、主として平成24年度の実験において残された課題(被験者数等)を補強するために行った南浦和駅周辺での現地歩行実験(被験者25名)と、大宮駅周辺では仮想的テリトリーのモデル再検討の結果、3路線について追加実験を行った(被験者20名)ものがある。②仮想的テリトリーのモデル化の検討については、仮想的テリトリーを支える空間分類に(Pb:Public,SPb:Semi-Pubulic,SPr:Semi-Private,Pr:Private)の概念をテリトリーの属性として付与した分類を再考し、加えて仮想的テリトリーによる沿道空間と歩道空間の空間統合に関わる概念を整理した。①の大宮での実験はこの概念を適用したものであるが、SPbのみかSPbとPbの混合パターンにおいて仮想的テリトリーにおける仮想行動が想起され、歩行における人々の触れ合いを誘発する可能性も示唆された。③仮想的環境による実験手法の導入については、ウォークスルーシミュレーターを導入した時期が遅かったため、評価実験は3次元CGによる仮想環境での評価で代用した。実験は2通り実施し、一方は、完全仮想街路を対象に集合住宅前の接道空間を歩行者にとって快適な歩行環境とするために、仮想的テリトリーによる空間統合の考え方から特に植栽デザインの効果について評価を行ったもの、もう一方は八潮市を対象に特に大規模倉前の接道空間を同様に植栽デザインによって街路歩行環境を検討したものである。前者の実験では仮想環境を16画像作成し、そこを通過したり滞留できるとの仮想行動が観察できるような仮想的テリトリーの存在が歩行環境の向上に有効であることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初想定した仮想的テリトリーの考え方による歩行環境の評価については、2年間の研究活動によって5通りの評価実験・アンケートを実施し、有効なサンプルを蓄積することができた。研究対象についても、大宮駅周辺、南浦和駅周辺および仮想環境と多面的に評価を実施している。また仮想的テリトリーを実際の街路に適用する際の、空間構成とそれを支える街路景観構成要因のモデルについては、2年度目に至って評価対象地の特性を踏まえつつ、より街路景観の多様性をとらえた一般性の高いモデルと拡張することができた。一方、仮想環境における評価実験については、予定されたウォークスルーシミュレーターに対する機能的要請(十分な再現性をもったリアルタイム描画、照明環境再現、一般被験者のためのインターフェースなど)と費用の関係からソフトウェアの選定が遅くなり、導入したソフトウェアによる評価実験は実施できず、代用ソフトによる仮想環境評価となった。懸案のソフトはすでに導入をすませ、先行して実施した実験における街路モデルの移植を進めているところであるが、当初の計画よりもやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、まず第1に先行して実施した実環境における評価実験と対応した仮想環境による評価実験を行うことで、実環境との整合性を検証しつつ、多様な空間構成をシミュレートした実験を実施していく。また第2に、当初計画における最終年度の主要成果として、歩行環境を街路網として面的に評価し、地理情報システムにおいて視覚的に表現する点が挙げられている。この点については、前年度の成果のうち、南浦和駅周辺を対象とした評価分析では、街路網に対する歩行環境アンケートを実施しており、すでに駅周辺街路網の経路について歩行特性からみた7タイプのルート分類を試みに導出している。最終年度では、この経路分類に仮想的テリトリーによる歩行環境の充実度を属性として付与した評価手法を提案し、実験的に検証した上で街路網に対する面的評価手法として提示する予定である。なお学会発表としては、南浦和駅周辺の歩行環境評価について、Journal of Habitat Engineering and Designに投稿し、大宮駅周辺3経路での実験および仮想環境を用いた実験については、人間環境学会(5月17,18日)において2編の発表を行うことになっている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由としては、25年度に想定していた海外を含めた成果発表のための旅費、投稿料、校閲費が使用できていないためである。 上記の理由で示した未使用分については、前年度分成果をJournal of Habitat Engineering and Designへの投稿(6月)など使用する予定である。また交付申請において示したように、仮想環境として当初予定したCAVEの使用に代わり、ウォークスルーシミュレーターを用いることにしており、25年度のCG作成用ワークステーションの費用をソフトウェアに転用している。ところが現有のパーソナルコンピューターで当該ソフトを使用したところ動作性能が不十分であるので、次年度使用額により、ワークステーションを導入する予定である。
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