研究課題/領域番号 |
24560648
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青木 俊明 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (60302072)
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研究分担者 |
稲村 肇 東北工業大学, 工学部, 教授 (50168415)
林 洋一郎 法政大学, キャリアデザイン学部, 准教授 (70454395)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 合意形成 / 手続き的公正 / ソーシャル・キャピタル / 互酬性規範 / 協力行動 |
研究概要 |
現在,多くのコミュニティが衰退しつつあるが,その原因は“住民間の協働が減少したことによる住民間のコミュニケーションの減少”にあると考える.そこで,本研究では,社会基盤整備に関する合意形成を活用することで地域のソーシャル・キャピタルと個人のQuality of Lifeが高まり,コミュニティが再生しうることを理論と実証の両面から示し,コミュニティ再生策を提案することを目的とする.具体的には,本研究では,公正な手続きの下で,社会基盤整備に関する合意形成を行えば,個人の協力行動が喚起され,個人のQoLと地域のSCが高まるというモデルを検証する. 平成24年度は,①モデルの構築が終了し,②7カ所の自治体における住民合意形成を題材にインタビュー調査を実施し,本モデルの有効性を確認した. モデルの構築においては,当初計画では想定していなかった“互酬性規範”を協力行動のモデルに組み込んだことにより,周辺理論との統合性を高めた理論モデルの構築ができた.また,インタビュー調査により,理論モデルの有効性が確認できたことから,これまで社旗基盤整備は“単なるハード面の整備”と見なされてきたが,それが“ソーシャル・キャピタルの向上”など,ソフト面の向上にも資するものであることが示唆された.このことは,社会基盤整備の意義を的確に評価する上で,極めて重要な知見だと言える.また,東日本大震災の復興計画に関する合意形成を研究題材としたことにより,当初計画では予測していなかった知見も得られた.例えば,震災復興時には,民意が時間経過とともに現地再建から集団移転に変化することや,住民間に強い意見の相違が生じた場合,強力なリーダーシップなくして合意形成が難しいこと,などが判明した,これらの知見は,合意形成の進め方を検討する際の理論的視座を与えており,その意味でも有益な知見と言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,平成24年度は,理論モデルを構築し,その検証をweb実験にて行う予定であった.理論モデルの構築は終了し,実験用webサイトも作成中だが,web実験の実行には到っていない.その点ではやや遅れていると言わざるを得ない. 一方,平成25年度は,構築した理論モデルを現実のワークショップ等を用いて実証する予定であるが,東日本大震災の復興合意形成が活発化していることに鑑み,そこでの住民協議を対象とした調査を優先させ,既に7カ所で実施した.残すは,住民への質問紙調査のみとなっている.その点では平成25年度の予定は当初計画以上に進んでいる. 平成24年度予定の1/2,平成25年度予定の2/3が終了しており,年内には平成24年と平成25年の研究予定が終了できることから,本研究の進行状況は「おおむね順調」だと評価した.
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今後の研究の推進方策 |
まず,平成25年度は平成24年度の積み残しである「心理実験を用いた理論モデルの検証」を実施する.この調査は,web調査のシステムを利用し,実験用webサイトにシナリオを提示し,それを読んだ人の反応を計測する.その際,シナリオは手続き的公正(高・低)×自己関連性(+,-,0)×社会的正当性(+, 0)の3水準12要因の実験を行う.また,実験の後半では,回答者のパーソナリティも計測し,回答傾向とパーソナリティの関係も分析する.さらに,実験シナリオは,社会基盤整備と早期退職の2つを用意し,理論の一般性についても検証できるように配慮する.現時点では,5月中に実験を実施する予定である. 一方,現実の合意形成事例を用いたモデルの検証については,すでにインタビュー調査が終了済みであるため,質問紙調査のみを行う.インタビュー調査の結果を踏まえて,仙台市,相馬市,亘理町のなかから1地域を選定し,住民を対象に質問紙調査を実施する.これにより,現実場面におけるモデルの妥当性を統計的に検証する.なお,質問紙調査は,夏頃の実施を予定している.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の使用額は,当初予定していたweb調査の実施を平成25年に延期したことによって生じたものであり,延期したweb調査に必要な経費として平成25年度請求額とあわせて使用する予定である.
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