研究課題/領域番号 |
24560648
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青木 俊明 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (60302072)
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研究分担者 |
稲村 肇 東北工業大学, 工学部, 教授 (50168415)
林 洋一郎 慶應義塾大学, 経営管理研究科, 准教授 (70454395)
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キーワード | 都市計画 / 社会心理学 / 地域計画 / 合意形成 / 協力行動 / 復興 |
研究概要 |
本研究では,社会基盤整備に関する合意形成活動を協働の機会として捉え,それを提供することで地域のソーシャル・キャピタルと個人のQuality of Lifeが高まり,コミュニティが再生しうることを理論と実証の両面から示すことを目的とする.その上で,コミュニティ再生策を提案する. 平成25年度は,2つの調査・分析を実施した. まず,大学生を対象としたシナリオ実験を行い,協力行動とパーソナリティー(公共心の高低)の関係について分析した.これは,個人のパーソナリティによって個人の協力行動意図が変わりうることが想定されたためである.分析の結果,1)公共心が低い場合には,個人が公正な手続きを体験すると手続き的公正効果が顕著に現れるが,公共心の高い個人では手続き的公正効果は認められなかった,2)これまで,不明瞭であった手続き的公正効果の発現プロセスが,少なくとも私的利益の理解,社会的利益の理解,信頼感の向上,の3ルーツを通じて生じることが判明した. また,東日本大震災の被災者を対象とした質問紙調査のデータ分析も行った.これにより,「公正な手続きがソーシャル・キャピタルを高めうる」という仮説の正しさが支持された.さらに,その効果は,より危機的状況にある場合ほど高いことも発見された. これらの結果から,本研究で想定した仮説が概ね正しいことが判明した.しかし,これらは一回の調査結果でしかないため,別の事例を用いて知見の妥当性を改めて検証していく必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,構築した理論モデルの実証研究を行う予定であったが,その前にシナリオ実験を行い,理論モデルの検証に適した実験室的状況でモデルの妥当性を検証した.さらに,東日本大震災の被災者に質問紙調査を行って得たデータを分析し,理論モデルの有効性も検証した.しかしながら,平成25年に実施予定だったweb実験はまだ実施されていない.ただし,研究で用いる尺度の選定や状況設定は既に終了しており,残すはweb実験の実施のみとなっている.そのため,時間ベースで考えれば,平成25年度予定の2/3は既に終了していると言える. 平成24年度予定分は終了し,平成25年度予定の2/3が終了している.平成26年度予定の現実の合意形成活動を題材にした調査についても,調査票はほぼ完成しており,6月実施の予定で準備を進めている.さらに,平成25年度中に,当初は予定外であったソーシャル・キャピタルの形成メカニズム分析を被災者を対象に行ったことを考えれば,本研究の進行状況は「おおむね順調」だと評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,当初の予定通り,実際の社会基盤整備事業の合意形成活動を題材に,フィールド調査を行い,本理論の有効性を確認する.現在,多くの復興事業が行われていることから,宮城県仙台市,宮城県亘理町,福島県相馬市,の3市町の被災住民を対象に調査を行う予定である.いずれも,インタビュー調査の後に質問紙調査を行う.さらに,前年度の積み残しであったweb調査についても,秋口までに実施する予定である.データ収集後,これらは直ちに分析作業にかかり,できるだけ早期に学会等で発表する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
web調査が未実施だったため,その分の費用が残金となり,繰り越しとなった. 平成26年度の上半期にweb実験を行う.これにより,繰越額を消化する予定である.
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