研究課題/領域番号 |
24560649
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
伊東 孝 日本大学, 理工学部, その他 (30287578)
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研究分担者 |
大沢 昌玄 日本大学, 理工学部, 講師 (10366560)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 災害復興 / 大火復興 / 震災復興 / 土地区画整理事業 / 事業プロセス / 事業推進要因 |
研究概要 |
1.各種災害復興計画の把握 1919年の旧都市計画法制定期から現在に至るまでの災害復興土地区画整理事業を用いた災害復興について、その実施状況を把握した。その結果、戦災復興を除き135都市7,672haの災害復興土地区画整理事業が実施されていることが明らかとなった。その中でも、関東大震災や戦災復興のように施行面積が1,000haを越えるような極めて大規模なものと、施行面積が十数haの小規模なものがあった。本研究においては、大規模なものと小規模な復興に分け、研究を進めた。なお、大規模な復興は事業誌の存在が明確であり、内容分析も速やかに行うことが可能であるが、小規模な復興については、復興事業の面積や施行期間の簡単な事業概要は把握できるが、計画プロセスの変容、土地利用計画は確認できないことから、全国規模で事業誌の収集を行った。 2.大規模な復興 関東大震災について、復興実施組織体制と財源について把握を行い、組織と財源の観点から復興計画の変容プロセスを明らかにした。帝都復興事業における執行体制の変遷過程を組織および職員の観点から明らかにするとともに、復興事業に関わった技術者の特徴を考察した。進捗に合わせた所掌事務の見直し・行政整理により組織再編が行われていたこと、復興局および復興事務局の官吏職員は1,366 人おり、うち技術職員は864 人(技監1 人、技師163 人、技手700 人)いたこと、中央は内務省・鉄道省から、地方は44 庁府県9 市から技術者が集められていたこと(特に耕地整理実務者)を明らかにし、あわせて財源の変容も把握した。 3.小規模な復興 戦災復興(大規模)と同時に行われていた小規模復興について、戦災復興と比較しながら事業推進要因について、当時の技術者の言説より分析を行った。また、組合施行で初めて実施された日暮里大火復興土地区画整理事業の実施実態と特徴を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.大規模な復興 財源の観点から、昭和13 年度まで予算の割り付けが行なわれていた帝都復興事業の事業費および財源の全体像を明らかにした。国、東京府、東京市、神奈川県、横浜市の事業費の予算総額が11 億9,310 万4,886 円、昭和11 年度までの支出総額が11 億4,012 万36 円であったこと、主たる財源は国が公債、地方は国庫補助金および公債であり、公募債の大半は外国債であったこと、東京市においては償還財源確保のために新税の導入および増税が行なわれ、横浜市は東京開港と引き換えに国により利子・為替差益分の補給を受けていたことを明らかにした。 2.小規模な復興 全国規模で事業誌の収集を行い、地区の分析、併せて事業推進言説分析を行った結果、長野県飯田市の大火復興土地区画整理事業が、戦災復興と比較して時間的に優れていたと評価されたことが明らかとなり、ケーススタディとして空間軸、時間軸の観点から分析を行った。飯田の復興に当たっては、戦災復興の事業進捗の遅延状況を踏まえ、城下町の町割りの骨格を最大限に活用して現況重視型で速やかに換地設計を行い、事業を進めたことがわかり、災害復興を速やかに実施するために現状空間と復興計画を融合させていた。 3.復興事業の経年的変容分析を行う上での事業推進要因の分析 戦災復興と並行して多くの災害復興土地区画整理事業が行われ、戦災復興の長期化に対し、災害復興は短期間で行われていたとの評価がなされていたことを把握した。また、戦災復興の事業遅延要因を鑑み、技術者の言説分析から、災害復興を計画通りに速やかに推進する上で、「換地設計の早期樹立」「復興計画を作成する市街地図の準備」「事業費の確保」の3つが大きな要因であることがわかった。 上記3つの研究実績は、2013年6月開催の土木学会土木史研究発表会にて発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
小規模な復興について、本年度は可能な限り復興誌等の文献収集を全国規模で行った。次年度は、まだ収集ができていない都市の復興誌等を入手する活動を継続するとともに、収集した復興文献を用いて、まだ明らかとなっていない小規模復興地区について、空間軸、時間軸の観点から分析を行い、経年的変容を明らかにする。その分析を踏まえて、ケーススタディ地区を抽出し、空間軸、時間軸の観点から分析を行う。なお今まで得られた結果より、戦災復興都市で戦災復興が実施されていている最中に、再び災害に襲われた福井市(福井地震)、新宮市(津波)について、当初の復興計画との違いや変容せざるを得なかった内容について解明を行う。また、本年度は火災からの復興について把握したため、次年度は災害種別では諫早水害、チリ地震津波からの復興について明らかにする。また事業推進言説分析より、熱海市、能代市、福井市が復興事業を円滑に実施していたことが判明し、それらの都市の事業プロセスを明らかにする。そしてケーススタディを踏まえ、災害復興計画推進の要因を解明し、今後の災害復興計画に活かす。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.未入手の小規模復興都市の復興誌等の基礎データ、図面の収集 2.収集したデータ分析 3.ケーススタディ都市への資料収集および現地確認出張 4.研究成果発表のための出張 5.研究成果の論文投稿 なお、本年度未執行分については、3月に掲載された審査付論文の掲載料として次年度支出する。
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