信号交差点が連続する道路区間約3.5kmを3Dドライビングシミュレータ上に作成し,「推奨速度情報」や「アクセルオフ情報」をドライバーに提供することによって,CO2排出量を削減できることが昨年度までにわかったが,今年度はさらに,複数車両が走行する状況下,特に追従状態における前車への情報提供が後車に及ぼす影響を捉えた.その結果,前車が情報提供ありの場合には,前車の走行挙動が追従車に影響を及ぼすことがわかった.追従車は,前車と同じような挙動をとり,無駄な挙動が少なくなっていた.前車が情報提供なしの場合には,追従車へ情報提供を行うことによって追従車からのCO2の排出量を2.5%前後減らせることもわかった.これらのことから,複数車両が追従状態で走行する際にもドライバーへの信号情報の提供は有効であり,CO2の削減効果があることがわかった. 情報提供が運転挙動に及ぼす影響をドライビングシミュレータで計測するとともに,情報提供への反応が個々のドライバーによって異なる点を考慮するため,マルチエージェントシステムによるネットワーク交通シミュレーションを試作した.このマルチエージョントによるシミュレーションを用いて,情報への反応が異なる2種類のドライバーを発生させ,簡単な都市ネットワークでの評価を行った.また,道路状況を考慮して知的に信号を制御する状況下でのシミュレーションも行った.その結果,ドライバーに信号情報を提供した場合の方が,また,全ドライバーが信号情報に従った場合の方が,交通流動の効率化を図れることがわかった.さらに,ドライバーへの情報提供と信号制御を連携させることによって,交通状況が安定するまでに時間を要すものの,最も効率的な運用が可能であることも明らかになった.
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