本研究はHesterの合意形成型計画論「ジオメトリー」の全容を把握したうえで、海外先進事例の実態調査ならびに我が国における環境共生型社会基盤整備事業のプロセスを実証的に考察した。さらにアメリカ環境保護団体SAVE Internationalとの協働や南米コロンビア・マニサレス市での国際的・実践的な検討を踏まえ、我が国における環境と経済の両立に向けた戦略的計画論の要点について整理した。 具体的にはまずHesterが評価するサンフランシスコ・オクテイヴィア並木通り事業の現地踏査を行い、事業経緯や環境的快適性と交通利便性の両立に向けた具体的な方策ならびに合意形成、効果について明らかにした。またジオメトリー論を援用した国内における環境共生型計画づくりの実践的検討として、福岡市における多々良川の環境調査分析を実施、本理論の有用性を検証し、SAVE Internationalと協働による福岡アイランドシティ野鳥公園計画のプランを提案した。さらにコロンビア・マニサレス市における現地調査を実施し、環境施策の把握から具体的な公画計画の提案を行った。 また環境共生型社会基盤整備の戦略的計画手法に向けた事例の史的分析として、都市エリアと自然エリアがコンパクトに共存する福岡市を事例に、同市の都市戦略に関する考察を行った。また共生型都市形成を目指す社会基盤整備の影響を論考するため、博多湾内に位置する港町の箱崎を事例に、町の形成に関わる変遷と近代化がもたらした空間的、社会的影響について史的に考察した。加えて環境都市として先進的な北九州市を事例調査し、これまでの環境共生事業ならびに現在の取り組みについて整理、考察を行った。
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