研究課題/領域番号 |
24560656
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
吉田 英樹 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70210713)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 災害 / 廃棄物 / 仮置き場 / 温度 / 火災 / ガス / 好気性反応 |
研究概要 |
本研究では、岩手県内の仮置場において、現場でポータブル測定器を用いて、発生ガス成分および内部温度について調査を行い、火災発生の要因について検討した。その結果、以下の3つの主な成果を得た。 (1)50mm未満の細かい木くず及び土砂が相当量含まれたがれきは、一定量の堆積を行うと、好気性微生物反応により温度が70℃程度まで上昇することが、現場での仮置き場廃棄物内部の温度及びガス成分(10%近い炭酸ガスの成分の検出)から確認できた。一方、その高温状態から発火に至るプロセスについては、文献調査により木くずの水和熱・微量に含まれる不飽和脂肪酸の酸化反応・灯油のような可燃性液体などの発火が推定されたが、現場における初期的な温度上昇は好気性微生物反応による温度上昇と推定された。 (2)当面の対策としてがれき仮置き場全体の温度低減が必要であった。特に内部温度上昇に影響を及ぼすのは盛り立て高さであり、高いがれき仮置き場ほど温度が上昇しやすいことが現場調査でわかったため、高さによる内部温度への影響を検討するため、有限要素法を用いたソフトウェアCOMSOLによる解析計算を行い、高さを10mから2.5mまで低くすると、20度以上内部温度の上昇を抑えることができることが確認できた。 がれき仮置き場の管理において、50mm未満の細かい木くず及び土砂が相当量含まれ、盛り立て高さが5m以上の場合には温度及びガス成分の現場管理が非常に重要であることがわかったため、現場を管理している被災自治体および民間の廃棄物処理処分業者に提言・助言を行った。また、現場における温度及びガス成分の詳細な調査のための機器および人員が不足していることがわかったため、今後も継続的に支援を継続することとした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予測していたような温度上昇が顕著に仮置き場において観測され、また内部から炭酸ガス、メタンガス、一酸化炭素のような反応が起こっている場合に生じる各種ガスが検出されたことから、依然として火災発生のリスクがあることが確認できた。特に、仮置き場の廃棄物の掘り起こしを行ったところ、炭化している廃棄物が見られ、火災にいたらないまでも高温になっていたことも確認できた。このことから、仮置き場の温度上昇から高温化と火災リスクの上昇が起こっているものと考えられた。 一方、仮置き場の規模が小さいところほど温度上昇は顕著ではなく、環境省のガイドラインに従って廃棄物の積み上げ高さを最小限に抑えているところは温度上昇が小さいことも確認できた。このことは、数値シミュレーションにより、同じ規模の廃棄物を高さを変えて積み上げたモデルで温度上昇を試算したところ、高さが低い廃棄物での温度上昇が著しく小さくなることが確認できた。これらのことから、仮置き場の多くの場所で温度上昇の可能性はあるが、積み上げ高さによって上昇温度が異なり、高い場合に火災にいたるような高温化が起こることが推定された。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、基本的な温度上昇のメカニズムを解明できたことから、仮置き場現場における温度とガスの計測は継続するとともに、仮置き場における廃棄物が、当初の分別前の混合廃棄物から分別された廃棄物に移行していることから、さらに分別廃棄物の種類による温度上昇の違いについて明らかにする予定である。特に、分別された木くずの温度上昇が活発であることが現地で確認できており、木くずの温度上昇のメカニズムにおいては、微生物反応とともに水分の吸着熱も大きな影響を与えるとされており、このような温度上昇のメカニズムの違いを明らかにする必要がある。このために温度上昇を伴う箇所でのガス成分の解明を行うとともに、数値シミュレーションによってこれらの原因の異なる発熱源による温度上昇への影響を評価する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は現場調査の頻度を多くして、温度上昇の顕著な仮置き場における連続的な温度・ガスの測定を行うための旅費を計上している。また、数値シミュレーションを行うことによる計算結果の可視化に必要なグラフィックスソフトウェアの経費も計上する。
|