研究課題/領域番号 |
24560656
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
吉田 英樹 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70210713)
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キーワード | 災害廃棄物 / 火災 / ガス発生 / 温度 / 発熱 |
研究概要 |
本研究では、平成24年度に引き続き、岩手県内の仮置き場において、現場でポータブル埋立ガス測定器と温度測定器を用いて、発生ガス成分および内部温度について調査を行い、火災発生の要因について検討した。その結果、以下の3つの主な成果を得た。 (1)災害発生当初堆積していた未分別の災害廃棄物の仮置き場はほぼ解消していたが、可燃ごみの分別後の50mm未満の細かい木くず及び土砂が相当量含まれたがれきは大量に堆積していた。堆積廃棄物中の温度及びガス成分については、温度が60℃程度まで上昇し、10%近い炭酸ガスの成分が検出され、好気性微生物反応は生じていることが推定された。一方、2011年から現在まで高温状態から発火に至るような事象は生じていない。これは、当該研究調査結果より、定期的に仮置き場の廃棄物の掘削・移動を行うことを提言した結果を現場で実行しており、一定の温度低減効果があったことが一因と考えられた。 (2)当面の対策としてがれき仮置き場全体の温度低減が必要であった。そこで、約100m四方の仮置き場において、幅3m、奥行き5m程度の幅で廃棄物の掘削・移動を定期的に行った。その結果、掘削直後は内部温度が60℃程度まで上昇していたが、1日放置後には30℃程度まで低下することがわかった。 (3)H24年度に引き続き、仮置き場の高さによる内部温度への影響を検討するため、有限要素法を用いたソフトウェアCOMSOLによる解析計算を行った。前年度からガス移動による熱移動現象を考慮した点でモデルの改善を行った。その結果、盛り立て高さが5m以上の場合には内部への蓄熱効果が高く、かつ頂点部に埋立ガスの流れが集中し、熱対流効果に伴い内部に空気が流入する可能性があることが示唆された。このため、現場を管理している被災自治体および民間の廃棄物処理処分業者に提言・助言を行い、平成26年3月の仮置き場解消まで支援を継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
災害発生から2年以上が経過して、分別していない仮置場における火災に至るような高温現象の発生のリスクは減っていることが確認できたが、分別後の可燃ごみの堆積によるガス発生と温度上昇は継続していた。このことから、分別後も依然として火災発生のリスクがあることが確認できた。 一方、環境省のガイドラインに示されているように仮置場の頂点付近の温度上昇が顕著であることが確認できた。このことは、数値シミュレーションにより、内部で発生した埋立ガスが熱対流により流出し、温度が周囲より上昇することが示唆された。また、このような熱対流に伴うガス流れによって、外部の空気が廃棄物層内に流入する煙突効果が起こる可能性があることも示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
2014年5月現在、宮城・岩手の災害廃棄物仮置場はすべて解消したため、今後は分別前及び分別後の災害廃棄物仮置場における温度上昇のメカニズムの詳細な解明のため、既存の廃棄物処分場で温度上昇が顕著な現場における温度とガス成分の観測を行うとともに、観測データの再現のための数値シミュレーションにおいて、熱対流による埋立ガスと空気、特に水蒸気の移動現象を考慮したモデルの構築により、仮置場における温度上昇現象の解明を行う。さらに、今後災害廃棄物が発生した時の温度上昇がみられた場合の適切な対処法(掘削・移動または表面覆土など)について、数値シミュレーションを通じて提言する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた災害廃棄物温度・ガスデータ提供に伴う謝金の支出が不用になったため。 予定していた謝金支出を数値シミュレーションに必要な消耗品購入に充てて、当該計画を実施することとする。
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