研究課題/領域番号 |
24560658
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
藤田 昌史 茨城大学, 工学部, 准教授 (60362084)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 硫酸塩還元細菌 / 海水 / 生活排水 / 包括固定化 / 微生物群集構造解析 |
研究概要 |
平成24年度の研究計画では、1) 海水存在下で処理機能を発揮するSRB汚泥の集積、2) SRB汚泥の包括固定化方法の最適化と固定化担体の馴致運転を予定していた。 1)については、都市下水処理施設のスクリーン通過水を植種源として、都市下水と海水を混合させた原水を流入させて、6L規模回分式活性汚泥装置を200日以上にわたり運転した。TOC除去率は80~90%程度であり、海水存在下でも有機物除去が可能であることが示された。ただし、回分活性試験の結果からは、有機物除去には当初想定していたSRB(硫酸塩還元細菌)の寄与もあるが、むしろ別の従属栄養細菌が主要な役割を担っている可能性が示唆された。DNAサンプルは採取済みなので、平成25年度に予定している微生物群集構造解析でこの点にもアプローチする。 2)については、1)で集積した汚泥を用いて包括固定化を行った。固定化剤として14EGを用いた。添加量は10%、15%、20%の条件とした。この三条件で固定化した担体(3mm角)を充填率10%で300mL三角フラスコにそれぞれ添加して、都市下水に海水を加えた原水を流入させて回分式運転を行った。固定化剤の添加量によっては微生物活性が阻害され、有機物除去能力に違いが出ることを想定していたが、現段階ではどの系でも有機物除去ができている。したがって、この三系列の固定化担体を用いて、平成25年度に予定している反応速度論の検討を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画で予定していた二つの検討内容は問題なく実施することができ、順調に研究が進んでいる。平成24年11月には特許出願、平成25年3月には学会発表を行った。また、本研究の成果をフィードバックするうえで重要となる環礁国の沿岸水質汚濁の現状や汚濁機構についても知見を整理し、論文を公表することができた。また、この検討のなかで、計画段階では想定していなかった重金属汚染対策の重要性も見出すことができ、本研究課題の幅を広げることができた。したがって、当初の計画以上に研究が進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、研究計画書の予定どおり「汚泥の微生物群集構造解析と硫酸塩還元細菌の主要な炭素源の評価」、「さまざまな塩分濃度条件下における有機物変換・硫酸塩還元反応速度の評価」を実施する。当初は硫酸塩還元細菌に焦点を当てていたが、今年度の研究で別の従属栄養細菌が有機物除去を担っている可能性も示唆されたことから、視野を広げて柔軟に研究を推進する予定である。 また、環礁国の沿岸水質汚濁の現状を調べるなかで、生活排水の流出により海岸底質の重金属濃度が人為影響のない地域よりもはるかに高いことを見出した。環礁国の国土形成を担う有孔虫や珊瑚などの沿岸生態系に影響を及ぼしている可能性がある。当初の計画にはなかったが、平成25年度は排水中の有機物に加えて重金属も考慮して研究を進めることを考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、微生物群集構造解析のための消耗品費・外注費、研究打合せ・成果公表のための旅費、実験補助のための謝金を中心に研究費を使用する予定である。消耗品費の一部は、前述した重金属の観点での実験のために使用する予定である。
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