研究課題/領域番号 |
24560659
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
小松 俊哉 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (10234874)
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研究分担者 |
高橋 優信 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30573688)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 環境質評価 / 水質 / バイオアッセイ / 生態毒性 / ニセネコゼミジンコ / 繁殖試験 |
研究概要 |
甲殻類のニセネコゼミジンコ(Ceriodaphnia dubia)を用いた繁殖試験による環境水の毒性レベル評価は,基本レベルの生態毒性試験の中でも感度が高く,種の保存や水圏環境保全の観点からも非常に重要な試験である。本研究では,多種多様な環境水に対してC. dubia繁殖試験を行い,その毒性レベルを明らかにすること,さらに多世代影響を評価するための新規の繁殖試験を提案・実施し,より厳しい観点から水質安全性を評価することを主な目的とする。平成24年度はC. dubia繁殖試験方法を確立した上で,河川水による繁殖試験の実施を中心とした。 1 C. dubiaの飼育・繁殖試験方法の確立 飼育・繁殖試験は,USEPAのWET試験方法No.1002.0に準拠した方法で行った。C. dubia繁殖試験は,対照区(飼育水)において一定の基準以上でないと成立しないが,安定的に条件を満足することが一般に困難である。研究前半において,飼育・試験時の水の種類,硬度レベル,給餌方法等の検討を行い,試験成立条件を安定的に達成できる方法を確立した。 2 河川水を試料とした繁殖試験の実施 試験方法の確立後,地域近郊の環境基準点等の3ヶ所程度の汚点を選定して,繁殖実験を複数回実施した。繁殖試験は数段階の河川水系列で行い,対照区の結果と比較して産仔数減少効果及び致死効果(EC25,LD25など)を算出して毒性レベルを評価した。一部の河川水サンプルにおいて毒性が確認でき,地点によって毒性の現れ方に特徴がみられた。毒性レベルは,TOC(全有機炭素),アンモニア性窒素,EC(電気伝導率)などの一般的水質指標との関連性は殆どみられなかった。また,試験の感度は試験的に同時に実施したオオミジンコ(D. magna)繁殖試験と同程度であり,短期間で行えるC. dubia繁殖試験の有用性を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の主な目標は,C. dubia繁殖試験方法を確立すること,及び河川水による繁殖試験を実施して河川水の毒性レベルを明らかにすることであった。また,河川水を試料とした場合のオオミジンコ(D. magna)繁殖試験の結果と比較することも目的とした。 C. dubia繁殖試験方法の確立に関しては,安定的に試験成立条件を満足することがD. magna繁殖試験よりも一般に困難であるため,飼育・試験時の水の種類,硬度レベル,給餌方法等を検討した。その結果,試験成立条件を安定的に達成できる方法を比較的早い時期に確立できた。また,サンプル数は多くなかったものの,同一河川水サンプルを用いて同時にC. dubia繁殖試験とD. magna繁殖試験を行った結果,両者の感度が概ね等しいことを見出した。 河川水での繁殖試験のデータ取得に関しては,試験確立後,地域近郊の代表的な3地点を選定し,定期的にサンプリングを行い,主要水質項目を測定した上で繁殖試験を実施した。毒性が検出される場合は用量-反応関係に正常な傾向が確認でき,信頼性の高い毒性レベルを得るとともに,地点・季節による影響を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は前年度に引き続き河川水の繁殖試験を実施する。これは,年間を通してのデータを取得することと,ミジンコ類への影響が大きいとの報告が多い農薬類が5~7月頃を中心に使用されるための影響検討も目的としている。後半は以下に示す排水の評価を中心に行うとともに,翌年度に予定している多世代繁殖試験の実施に向けた基礎的検討を行う。 ・排水を試料とした繁殖試験の実施 対象とする河川水系に排出される排水として,水系への排出状況の調査を行い排出水量が大きいものを優先的に選定し,試験サンプルとする。繁殖試験は,河川水よりは投与比率を低めた数段階の系列で行い,産仔数減少率や致死効果を算出する。なお,残留塩素が排水に含まれる場合はミジンコ類へ及ぼす影響が大きいため,水質測定において残留塩素を測定するとともに,高濃度の場合は残留塩素を除去したサンプルの使用を検討する。また,河川水と同様に他の基本的な水質測定も行い,バイオアッセイの結果との関連性を検討する。 最終年度の26年度は,河川水,排水に対するC. dubia繁殖試験および基本的な水質測定を継続して行い,年間を通してのデータを得る。また,さらなる安心・安全の観点から,通常の繁殖試験の評価方法では不明である種の保存への影響を評価するため,新たに提案する多世代繁殖試験を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品(合計4729円)の決算が遅れたたため,書類上,24年度の研究費に未使用額が認められたが,24年度中に納品され研究遂行に反映 させることができたため,25年度の研究費の使用計画には影響しない。
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