研究課題/領域番号 |
24560659
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
小松 俊哉 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (10234874)
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研究分担者 |
高橋 優信 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30573688)
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キーワード | 環境質評価 / 水質 / バイオアッセイ / 生態毒性 / ニセネコゼミジンコ / 繁殖試験 |
研究概要 |
ニセネコゼミジンコ(Ceriodaphnia dubia)を用いた繁殖試験による環境水の毒性レベル評価は,基本レベルの生態毒性試験の中でも感度が高く,種の保存や水圏環境保全の観点からも非常に重要な試験である。本研究では,多種多様な環境水に対してC. dubia繁殖試験を行い,その毒性レベルを明らかにし,さらに多世代影響を評価するための新規の繁殖試験を提案・実施し,より厳しい観点から水質安全性を評価することを主な目的とする。平成25年度は前年度に確立したC. dubia繁殖試験方法により,河川水の年間を通しての毒性評価を行うとともに,水系への排出水量が多い下水処理施設放流水についても試験を実施した。さらに,多世代繁殖試験の試験法について検討し,対照区において再現性の高い試験結果が得られた。 1 河川水の年間毒性調査 年間を通して1ヶ月に1回,信濃川水系の3地点の河川水の毒性を評価した。河川水Aでは毒性が殆ど検出されない一方,河川水B,Cでは4割程度のサンプルで認められた。毒性は夏季に現れることが多く,また河川水Bでは致死効果,河川水Cでは産仔数減少が主に見られ,毒性の現れ方に特徴が確認できた。TOC,アンモニア性窒素,電気伝導率などと毒性との関連性は全く認められず,毒性要因として農薬や重金属などの微量成分が示唆された。 2 下水処理放流水の毒性評価 当該水系への排出水量が多い排水として2ヶ所の下水処理場の放流水について複数回試験を実施した。その結果,希釈率を考慮した10%濃度の放流水では,いずれも毒性が検出されず,下水処理放流水が河川水の毒性要因になっている可能性は低いと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の主な目標は,河川水によるC. dubia繁殖試験を年間を通して実施し河川水の毒性レベルを明らかにすること,及びで水系への排出水量が多い排水の毒性評価の実施であった。また,多世代繁殖試験の試験法について確立することも目的とした。 これらの目標に対して,多数の実験を行い,3地点の河川水における毒性の特徴を明らかにすることができ,毒性要因も絞り込めた。これらの成果は国内学会(土木学会環境工学研究フォーラム,土木学会関東支部技術研究発表会)にて公表した。さらに,多世代繁殖試験の試験法についても種々の検討を行えたことから,研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は前年度に引き続き河川水および各種排水を用いてC. dubia繁殖試験を実施し,毒性データを蓄積する。同時に他の基本的な水質測定も行い,バイオアッセイの結果との関連性をみる。26年度の研究の中心は,一つは毒性要因の詳細検討であり,さらに,より厳しい種の保存の観点から多世代繁殖試験による評価である。 1 毒性要因の検討実験(毒性削減実験) 米国等のWET(Whole Effluent Toxicity,全排水毒性)規制において規定されている毒性削減評価(Toxicity Reduction Evaluation,TRE)を参考に,毒性が認められた試料に対して各種の処理を行ってから再度C. dubia繁殖試験を実施することにより,毒性削減効果から毒性要因を検討する。処理方法として,曝気,活性炭吸着,陽イオン・陰イオン交換樹脂等を用いる計画である。 2 多世代繁殖試験の実施 毒性レベルが高かった水試料を用いて行う。最初に通常の繁殖試験を行い,対照区,および最大の無影響濃度(NOEL)の希釈率で産出された仔虫を親個体に用いて二世代目の繁殖試験を実施する。この試験では,試験区においても対照区と同様に飼育水で試験することによって,産出されたミジンコ仔虫が受けた影響を明確化する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品(合計2040円)の決算が遅れたたため,書類上,25年度の研究費に未使用額が認められた. 25年度中に納品され研究遂行に反映させることができたため,26年度の研究費の使用計画には影響しない。
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