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2012 年度 実施状況報告書

ビルレンス因子を指標とした水道システムにおける感染性レジオネラの定量的検出

研究課題

研究課題/領域番号 24560663
研究種目

基盤研究(C)

研究機関京都大学

研究代表者

大河内 由美子  京都大学, 地球環境学堂, 助教 (00391079)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード水系感染症微生物 / レジオネラ / 感染能
研究概要

平成24年度は,水を介したレジオネラ感染リスク評価に資する基礎情報の整備を目的として,初めに受水槽方式の水道システムにおけるVBNC化細胞を含むレジオネラ汚染状況の把握を試みた。受水槽方式の大型商業施設や公共施設,学校を対象として,使用頻度が異なる給水栓計10 箇所を対象として水道水を採取し,レジオネラ全菌数,レジオネラ生菌数,培養可能レジオネラ菌数,従属栄養細菌数,ならびに残留塩素濃度を測定した。レジオネラ生菌数はEMA(Ethylenemonoazide)-リアルタイムPCR法により,全菌数は直接リアルタイム法により,培養可能レジオネラ菌数は試料をメンブレンフィルター上に濃縮後,GVPC平板培養法を用いて測定した。その結果,十分な残留塩素濃度が維持されている場合でも,PCR 法により全ての試料からレジオネラ属生菌が検出された。
その濃度は,レジオネラ全菌数で380 ~ 5100 copies/L,生菌数では420 ~ 2400 copies/L とほぼ遜色ないレベルで検出された。なお,今回の採水試料では培養可能なレジオネラは検出されなかったことから,EMA-PCR法で求めたレジオネラ生菌は全てがviable but nonculturable(VBNC)状態にあったと考えることができる。
また,レジオネラ感染能の変化を評価を目的として,ヒト白血病由来細胞THP-1を用いてレジオネラ共培養試験系の確立に取り組んだ。またこの試験系を用いて,水中のアミノ酸濃度条件によりレジオネラの感染能が大きく変化することを示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

水道水試料中のレジオネラ属細菌を対象としてVBNC状態のレジオネラ数の把握に取り組んだが,すでに浄水処理により種々のストレスを受けたレジオネラ細菌の場合には,EMA-PCR法ベースの市販の定量キットのEMA処理条件では膜損傷を受けていないレジオネラ細胞までもが膜損傷を受けてEMA修飾されてしまうことが判明し,この問題を解決するために想定外の時間を要したためである。

今後の研究の推進方策

H25年度はまず文献情報に基づいてレジオネラ感染能マーカーの選定を行う。レジオネラのビルレンス因子として既往研究において報告されている種々の遺伝子群のうち,1) 細胞への付着性,2) 細胞への侵入性,3) 細胞内での酸素依存性殺菌に対する抵抗性,4) 細胞内増殖性の各区分から,水試料中レジオネラの感染性と連動して発現量が変化する機能タンパク質候補を絞り込む。その後,H24年度に明らかにした通り,培養液中のアミノ酸濃度を変化させることにより異なる感染能を示すレジオネラ細胞を調製し,その感染能をTHP-1細胞を用いて感染能を定量するとともに,選定した感染能マーカー遺伝子を対象としてリアルタイムRT-PCR法により発現量を定量し,感染能と連動して変化するマーカーのスクリーニングを行う。
また,各種水道水試料からのレジオネラ細菌の分離を試みるとともに,顕著な感染能増大を引き起こす培養液中のアミノ酸濃度について詳細な検討を重ねるとともに,水道水中のアミノ酸濃度に関する情報を収集し,水道システム内に存在するレジオネラ感染能に対する影響因子に関する基礎データの集積を進める。
最後に,水道水から分離したレジオネラ細菌を対象として,選定した感染能マーカーの適用性の検討を予定している。
H26年度は,受水槽方式の水道システムや中央式給湯システムを対象として,確立した感染能試験系と選定した感染能マーカー遺伝子を用いて,給水システムにおける感染性レジオネラの存在状況の調査を進める。また,実際に水道水試料や浄水処理プロセス水から分離した感染性レジオネラ細菌種に関する遺伝子解析を進める。同時に,レジオネラ細菌がVBNC状態に移行するための各種条件を探索するとともに,VBNCレジオネラの感染能に関する評価を行う。

次年度の研究費の使用計画

H24年度に予定していた炭酸ガスインキュベーターが未購入である。インキュベーション内でのクロスコンタミネーション防止の観点から,感染能試験系に用いる細胞の継代培養と,感染能試験は物理的に切り離した空間で行うことが望ましいため,H25年度に新規に購入する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Determination of an acceptable assimilable organic carbon (AOC) level for biologically stability in water distribution systems with minimized chlorine residual2013

    • 著者名/発表者名
      Yumiko Ohkouchi, Bich Thuy Ly, Suguru Ishikawa, Yoshihiro Kawano, and Sadahiko Itoh
    • 雑誌名

      Environmental Monitoring and Assessment

      巻: 185 ページ: 1427-1436

    • DOI

      10.1007/s10661-012-2642-9

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Comparison of inflammatory responses in human cells caused by lipopolysaccharides from Escherichia coli and from indigenous bacteria in aquatic environment2012

    • 著者名/発表者名
      Yumiko Ohkouchi, Satoshi Tajima, Masahiro Nomura, and Sadahiko Itoh
    • 雑誌名

      Journal of Environmental Science and Health, Part A

      巻: 47 ページ: 1966-1974

    • DOI

      10.1080/10934529.2012.695254

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ナノろ過膜処理を適用した浄水の細菌再増殖特性の評価2012

    • 著者名/発表者名
      大河内由美子,矢田祐次郎,文亮太,伊藤禎彦
    • 雑誌名

      用水と廃水

      巻: 54 ページ: 39-46

    • 査読あり
  • [学会発表] Chlorine requirement for biologically stable drinking water after nanofiltration2012

    • 著者名/発表者名
      Y. Ohkouchi, Y. Yata, R. Bun, and S. Itoh
    • 学会等名
      The 9th International Symposium on Water Supply Technology
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜市)
    • 年月日
      20121120-20121122
  • [学会発表] ナノろ過処理水の微生物再増殖特性に関する研究2012

    • 著者名/発表者名
      大河内由美子,矢田祐次郎,文亮太,伊藤禎彦
    • 学会等名
      第63回全国水道研究発表会
    • 発表場所
      くにびきメッセ(松江市)
    • 年月日
      20120516-20120518

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公開日: 2014-07-24  

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