研究課題/領域番号 |
24560666
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
関根 雅彦 山口大学, 理工学研究科, 教授 (30163108)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 河川物理生息場モデル / HSI / 河川生態系 / 中小河川 |
研究概要 |
多自然川づくりの展開にともない,河川生息場の評価手法が求められている.しかし,既存の河川生息場評価モデル(PHAB モデル)では,ともすれば単調で生物が少ない河道であっても,特定種の特定の生息段階に対して高評価をもたらす場合がある.実際には複数種・複数成長段階に対する評価を総合判断することでこの欠点は避けられるが,PHAB モデルの簡便さが失われるため,結果的にPHABモデルの普及の妨げになっている.本研究の目的は、多様な生物が生息する河川環境が高評価となる河川物理生息場評価手法を開発し,1回の計算で多様な生物に対する総合的な生息環境の良否を評価できる河川物理生息場評価ソフトウェアを作成することである. 平成24年度は,善和川,九田川において魚分布調査および流速,水深,底質,カバー等の物理環境調査を実施した.この調査結果と既往の研究および文献調査により,捕獲された個々の魚類の生息可能条件からバイナリHSI を作成した.また,個々の魚種の摂餌や休息などの生態に関する情報をもとにして全魚種に共通する流速,水深,底質のカテゴリ分けを行った.さらに,このカテゴリ分けに基づいて環境多様性を計算するシステムのプロトタイプをArcGIS上に構築した. その結果,上記システムを用いて計算された環境多様性の評価値と生物の生息数,生息種数との間に正の相関が得られ,「適切なカテゴリ分類を用いることで多少の誤差はあっても少数のHSI で多くの魚種の分布を説明できる」という本研究の仮説を現地調査に基づき実証できた. 現段階では2河川6区間の調査結果であり,環境多様性のレンジが十分とは言えないため,より単調な河川,より大きな河川での調査を実施して評価手法の精度向上を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り初年度の調査を終え,所期の結果を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
現段階では2河川6区間の調査結果であり,環境多様性のレンジが十分とは言えない.当初計画どおり,より単調な河川,より大きな河川での調査を実施する.次に,バイナリHSI の最大公約数的な重複領域と最小公倍数的な全体領域それぞれの分割数,ならびに行動圏パラメータを変数として設定し,モンテカルロ法により魚の分布が説明できるもっとも簡単なカテゴリ分割汎用HSI を定め,WUAなどの既存の評価値に対する優位性を証明する.また,また,プロトタイプとしてArcGIS上の実装した評価アルゴリズムを,実務で使用してもらえるソフトウェアとして完成させるため,既存の評価ソフトウェア開発者との連携作業を開始する.
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次年度の研究費の使用計画 |
河川調査消耗品,調査補助謝金,および既存の評価ソフトウェア開発者などの研究協力者との打ち合わせのための旅費を計上している.
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