研究課題/領域番号 |
24560667
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
貫上 佳則 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90177759)
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研究分担者 |
水谷 聡 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80283654)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 下水汚泥 / リン回収 / 組成分析 / メタン発酵 |
研究概要 |
平成24年度には、①下水汚泥に含まれるリンの形態分類分析法の確立、②生汚泥、余剰汚泥、消化汚泥、返流水中のリンの形態分類分析と分布調査、③中温メタン発酵過程における汚泥中のリンの形態変化の把握、について検討した。 ①では、下水汚泥中のリンの形態分類分析法として用いられているSTS法と、肥料分析方法によるク溶性リン分析法、排水中のリンの形態分類分析法として知られている6分画法、および底質調査法によるリン分析法を参考にして、試験法の一部を簡略化した。これらの方法を用いて実下水処理場から採取した消化汚泥と濃縮汚泥、生汚泥、余剰汚泥中のリンを分画した結果、複数の試験法で分画される金属結合態リンの形態が大きく異なる結果が得られた。そのため、各試験方法の適用性について、さらなる詳細な検討が必要となることがわかった。 ②では、標準法とAO法の2箇所の下水処理場で採取した消化汚泥と濃縮汚泥、生汚泥、余剰汚泥に対し、上述の4つのリン分画方法を適用して各々の汚泥に存在するリンの形態の特徴を比較検討した。その結果、AO法を採用している処理場の余剰汚泥の方が浮遊性有機態リンが多いものの、各々の消化汚泥でのリン組成はあまり違いが見られないことがわかった。 ③では、下水汚泥単独処理の場合と、下水汚泥に模擬厨芥もしくは食品廃棄物を混合処理した場合のバッチ式メタン発酵実験(中温発酵と、一部の高温メタン発酵)を実施し、発酵日数とともに反応槽内の汚泥を採取し、それぞれの汚泥に含まれるリンの形態分類分析を実施した。その結果、いずれの場合でもメタン発酵の進行につれて、有機態リンの割合が減少し、金属結合態リンとオルトリン酸態リンの割合が増えた。ただ、処理対象の濃縮汚泥や模擬厨芥は有機態リンの割合が高くなく、メタン発酵の進行によるリンの形態変化は大きくないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度には、①下水汚泥に含まれるリンの形態分類分析法の確立、②生汚泥、余剰汚泥、消化汚泥、返流水中のリンの形態分類分析と分布調査、③中温メタン発酵過程における汚泥中のリンの形態変化の把握を実施し、一部で新たな課題が見つかったり、次年度の実施項目を前倒しで実施できたりしたが、概ね計画通り進捗することができた。 ①では、参考とした試験方法の一部の手順を簡略化したが、参考とした4つの試験方法で得られる結果が大きく異なる試料も得られたことから、各々の試験方法の適用性について更なる詳細な検討が必要となり、研究は進捗しているものの新たな課題を確認することができた。 また②では、標準法とAO法を採用している下水処理場の各種汚泥中のリン形態を比較検討できたことから、概ね計画通り進捗することができた。 ③では、下水汚泥単独の中温メタン発酵と、模擬厨芥と下水汚泥との混合メタン発酵(中温発酵)だけでなく、平成25年度に実施予定の下水汚泥単独の高温メタン発酵のバッチ実験を実施することができ、各ケースの処理過程における汚泥中リン組成の変化特性を調べることができたことから、当初の計画以上に進展することができた。 以上を総合して、全体として概ね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書の段階では、平成25年度に④高温メタン発酵過程における汚泥中のリンの形態変化の把握と、⑤化学平衡計算による無機態リン組成の予測、を行い、最終年度である平成26年度には、⑥汚泥脱水工程における形態別リン収支の把握と、⑦脱水汚泥焼却灰中の形態別リン組成の把握、を行う予定であった。 平成24年度の進捗状況を受け、平成25年度は予定通り④と⑤の課題を進めるとともに、新たな課題として浮上した①の形態別リン分析法の適用性の検討を実施する。特にこの新たな課題に対しては、参考としている4つの試験方法で得られる情報について、リン組成が判明している模擬下水汚泥を用いた試験を実施することで、得られる情報の適用性を確認する予定である。また、④については、その一部を既に平成24年度に実施済みであることから、残されている下水汚泥と模擬厨芥との混合メタン発酵(高温メタン発酵)におけるリン組成の変化を実験で確認する予定である。また、処理場にて下水汚泥を新たに採取し、汚泥中のリンの形態分布のデータを増やす予定である。そして、最終年度である平成26年度に課題を残さないように研究を進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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