研究課題/領域番号 |
24560667
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
貫上 佳則 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90177759)
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研究分担者 |
水谷 聡 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80283654)
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キーワード | 下水汚泥 / リン回収 / 組成分析 / メタン発酵 |
研究概要 |
平成25年度には、①汚泥中のリン分析法の確立と、②高温メタン発酵過程における汚泥中のリンの形態変化の把握、③汚泥脱水工程における形態別リン収支の把握、および④汚水処理方式の違いによる汚泥中のリン組成への影響に関する調査、について実施した。 ①では、濃度の高い下水汚泥を扱う際に、希釈操作と濾過操作の手順の違いによる影響を調べた結果、濾過操作の前に希釈操作を行うと、リン組成が大きく異なることがわかり、遠心分離機を用いた濾過操作の後、希釈操作を行うことが必要であることがわかった。 ②では、下水汚泥と模擬厨芥を用いたバッチ式混合高温メタン発酵実験を行った結果、発酵が進むにつれて浮遊性加水分解性リンと有機態リンが減少して溶解性および浮遊性オルトリン酸態リンの割合が増える傾向が確認された。模擬厨芥の投入割合を変えて実験を行ったが、下水汚泥単独での結果と大きな違いが見られなかった。 ③では、中温消化汚泥と高温消化汚泥に対して2種類の凝集剤を用いた室内脱水試験を実施し、処理前後における汚泥中のリン形態の変化を把握した結果、凝集剤添加率を増やすにつれて溶解性オルトリン酸態リンの割合が減少し、金属結合態リンの割合が増加することがわかった。また、凝集剤添加率の増加につれて脱水濾液中の溶解性オルトリン酸態リンだけでなく、金属結合態リンも減少することがわかった。 ④では、汚水処理方式の違いによる汚泥中のリン形態の違いを調べるため、処理場内に標準法とAO法の2つの処理方式を有する下水処理場において、各種下水汚泥中のリン形態の調査を実施した。その結果、標準法よりもAO法による初沈汚泥や余剰汚泥の方がリン含有量がやや高いものの、リン組成については両方式の違いはほとんど見られなかった。そのため、汚泥中のリン組成は、汚水処理方式の違いには大きく影響を受けないと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度には、①汚泥中のリン分析法の確立と、②高温メタン発酵過程における汚泥中のリンの形態変化の把握、③汚泥脱水工程における形態別リン収支の把握、および④汚水処理方式の違いによる汚泥中のリン組成への影響に関する調査を実施した。 ①では、平成24年度に明らかになった新たな課題に対する対処策を見いだすことができ、計画通り進捗できた。②では、予定通り、下水汚泥と厨芥との混合高温消化処理における汚泥中リン形態の変化を調べることができ、計画通り進捗することができた。③は当初計画では平成26年度に実施する予定の項目であったが、研究全体で重要な項目であり、平成25年度に前倒しで実施したことから、当初の計画以上に進展することができた。④では、標準法とAO法の違いによる汚泥中リン形態の違いが見られないことがわかり、計画通り進捗することができた。 ただ、平成25年度に予定していた「化学平衡計算による無機態リン組成の予測」については、重要度の観点から最終年度である平成26年度に先送りすることとした。 以上を総合して、全体として概ね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成26年度には、⑤化学平衡計算による無機態リン組成の予測と、⑥脱水汚泥焼却灰中の形態別リン組成の把握を行い、プロジェクト全体の成果ととりまとめる。 ⑤では、下水汚泥からのリン回収を行う際の鍵となる浮遊性オルトリン酸態リンの形成メカニズムについて、化学平衡計算ソフトを用いた数値計算を行うことで、pHやORPなどの環境条件や各種共存イオン濃度と浮遊性オルトリン酸態リンの形成条件について予測を行う。また、⑥では、汚泥焼却灰を採取し、その中のリン形態について調べる予定である。 以上の結果と、平成25年度までの成果をとりまとめ、下水汚泥からのリン回収を行う際の合理的な方策について提案し、3年間にわたる成果をとりまとめる予定である。
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