まず、排水中のリンの形態分析法である6分画法を基本に、リン蓄積菌を対象としたリン分画法のSTS法と底質調査法を参考にして下水汚泥への適用性と簡略化を検討し、下水汚泥中のリンを5段階に分画する方法を提示した。この方法による実下水処理場での調査結果から、標準活性汚泥法とAO法とでは各種汚泥中のリン組成の違いはほとんど見られなかった。消化汚泥中の主なリン形態はリン酸態リンであったが、他の汚泥中のリンは浮遊性加水分解性リンと浮遊性有機態リンが主であった。 また、下水汚泥のメタン発酵実験(中温消化および高温消化)から、発酵の進捗によるリン組成を調べ、下水処理場での調査結果を支持する結果が得られた。また模擬厨芥と下水汚泥との混合メタン発酵実験におけるリン組成は下水汚泥単独の結果と大きな違いが見られなかった。 さらに実下水処理場の消化汚泥を用いた凝集剤添加と脱水実験から、凝集剤添加率を増やすにつれて脱水前の汚泥中の溶解性オルトリン酸態リン(D-PO4-P)の割合が減少し、浮遊性オルトリン酸態リン(P-PO4-P)の割合が増加して、脱水ろ液として回収できるリンの濃度が減少することがわかった。 加えて、消化汚泥からより多くのリンを脱水ろ液として回収するために、P-PO4-Pを可溶化する酸処理の効果と、酸処理後の脱水ろ液中のリンをMAPあるいはHAPとして回収する処理条件について検討した。まず化学平衡計算ソフトによる数値計算からP-PO4-Pの形成条件を把握し、クエン酸あるいは酢酸を用いることで、pHが5.5あるいは4の弱酸の条件で消化汚泥中のP-PO4-Pをすべて可溶化でき、微量の重金属も排水基準以下に抑制できることがわかった。また、クエン酸と酢酸いずれを用いても酸処理後の脱水ろ液のHAP形成には悪影響を及ぼさず高いリン回収率が得られたが、MAP形成にはクエン酸が悪影響を及ぼすことがわかった。
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