研究課題/領域番号 |
24560669
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
岩見 徳雄 明星大学, 理工学部, 准教授 (00353532)
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研究分担者 |
清水 和哉 東洋大学, 生命科学部, 助教 (10581613)
板山 朋聡 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80353530)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Microcystis / 細胞群体解体 / 捕食微小動物 / 隔離水界 / 個体群動態 / 分子生態学 |
研究概要 |
現場設置隔離水界を試作し、設置現場(井の頭池)の条件に対応できるよう改良を重ね完成させた。モデル生態系で用いる微生物のうち、生産者であるMicrocystisについては、実験サイトの井の頭池から3種(M. viridis, M. aeruginosa, M. novacekii)を分離し、保存、培養に成功した。捕食者については、先に分離したM. viridisに群体解体処理を施した集積培養等によって、実験サイトから採取した25属(原生動物19属, 微小後生動物6属)の捕食者の中からM. viridisの捕食者として可能性の高い原生動物鞭毛虫類Monas sp.および原生動物繊毛虫類Colpidium sp.を特定した。このうち、Monas sp.は分離、培養、保存に成功した。なお、集積培養においてはM. viridisおよびMonas sp.をはじめとする数種の出現微小動物の個体群動態も同時に調べた、その結果、M. viridisの減少とMonas sp.の増殖は、双方とも一次反応的に進むことがわかった。以上より、Monas sp.は細胞群体が解体されたM. viridisの捕食者であることが明らかとなり、Microcystisの低減化を捕食により促進させる上で、細胞群体解体の有効性が示唆された。MicrocystisおよびM. viridisの個体群動態について、分子生態学的解析を行うための双方に特異的な遺伝子の増幅を可能としたプライマーを設計した。Microcystisに特異的なプライマーについては、microcystin産生種の培養株および野生株を対象にreal-time PCRを行い標的遺伝子が定量できることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験サイト(井の頭公園池)では、平成25年度12月に池水の全量を放流し、約2か月にわたり池底泥のかいぼりを実施することとなったため、それに対応すべく隔離水界の改造を行った。そのため、当初予定していた隔離水界の実験サイトへの設置が遅れることとなった。しかしながら、平成25年度に行う予定としていたモデル生態系構築に係る一部の微生物については探索、分離、培養を前倒しして実施したので、3年間の全体計画としてはさほどの遅れはないと見ている。一方、隔離水界およびモデル生態系における微生物および水質モニタリングについては、分子生物学的手法も含め測定、解析が実施できる体制を整えることができたので、平成25年度に実施する隔離水界の実験サイトへの設置とモニタリングは円滑に進むと考えている。以上より、平成24年度の達成度は所期の計画に対し約70%と評価している。
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今後の研究の推進方策 |
隔離水界を実験サイトへ設置後、微生物モニタリングとモデル生態系に必要な微生物の分離、培養およびモデル生態系を構築するための室内実験を中心に行う。また、実験サイトでは、かいぼりは所期の計画にはなかったが、かいぼり前後の池の微生物生態系の変移について本研究で実施するモニタリング手法の範囲で並行して調査することとした。実験サイト池で得られたデータについては、実験サイト池の事象と、隔離水界およびモデル生態系の事象の双方の解析のために相補的に活用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
所期の計画どおり、研究代表者(明星大)は隔離水界およびモデル生態系における微生物個体群の動態および水質分析を行う。微細藻類および微小動物の計数に必要な機材はすでに準備できており、細菌数の計数に用いる消耗品としてディスポシャーレおよび培地試薬の調達に本年度の研究費を用いる。また、水質分析用の試薬類および消耗材料(キュベット、試験管、定量ピペットチップなど)の調達に本年度の研究費を用いる。モデル生態系に係る培養機器については低価格の三角フラスコを本年度研究経費で調達し、当研究室既存の材料と組み合わせて自作する。 研究分担者(東洋大)はRNA、DNA抽出キットおよびDNA増幅キット、標的遺伝子のプライマーの調達に本年度の研究費を用いる。また、RNA、DNAの抽出、増幅に用いる消耗材料(PCRチューブ、マイクロウェル、定量ピペットチップなど)についても、その調達に本年度の研究費を用いる。 研究分担者(長崎大)は研究代表者(明星大)および研究分担者(東洋大)により、本年度に得られるデータを解析するに先立ち、参考となる富栄養化貯水池に出向き微生物および水質調査を行い、そこから得られたデータを用いて解析方法の事前チェックを行う。このため本年度研究費の多くは旅費としての使途となる。
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