研究課題/領域番号 |
24560669
|
研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
岩見 徳雄 明星大学, 理工学部, 准教授 (00353532)
|
研究分担者 |
清水 和哉 東洋大学, 生命科学部, 講師 (10581613)
板山 朋聡 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80353530)
|
キーワード | Microcystis / 細胞群体解体 / 捕食微小動物 / 隔離水界 / 個体群動態 / 分子生態学 |
研究概要 |
本研究で実験フィールドとしている井の頭公園池では平成25年度に池のかいぼりとその事前工事が行われた。そのため同年度に予定していた隔離水界の設置と微生物および水質モニタリングは不可能と判断し、隔離水界実験は平成26年度に見送ることとした。したがって、平成25年度は所期の計画に挙げた分離微生物の培養実験を行い捕食・被食-動態を解析しモデル生態系を構築すするためのデータを得ることとした。具体的には、平成24年度に実験フィールドである井の頭池から分離・培養に成功した原生動物鞭毛虫類Monas sp.について細胞群体を物理的に解体したMicrocystisに対する捕食特性をpHなどの環境因子を踏まえ室内実験にて検討した。その結果、細胞群体を物理的に解体したMicrocystis viridis(IP-FJ株)に対するMonas sp.の捕食速度はもともと細胞群体を形成しないMicrocystis viridis(Microcystis aeruginosaに改名されたNIES 102株)に対するよりもやや低下したもののIP-FJ株のほぼ全量を捕食できることが明らかとなった。また、Microcystisの捕食者として知られている同属のMonas guttulaの増殖の至適pHは7.0※であるが、Monas sp.では9.2であることが明らかとなった。富栄養化水域ではMicrocystisの増殖に伴いpHはしばしば9~10にまで上昇する。この高pH化は、一次消費者である原生動物や微小後生動物の増殖を抑制するためMicrocystisの増殖にとってより有利な環境条件となる。しかし、高pH条件でも増殖できるMonas sp.の存在下でMicrocystisの細胞群体が物理的に解体されれば、その捕食-被食の相互作用によってMicrocystisのバイオマス低減化の可能性は高いと考えられる。 ※Norio Sugiura et al.: Effect of physicochemical factors on graze and decomposition of blue-green alga, Microcystis aeruginosa by mastigophora, Monas guttula, Jap. J. Water Treat. Biol., 27(1), 111-116, 1991.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成25年度に実験フィールド(井の頭公園池)において「かいぼり」計画が予定されたため、かいぼり時に対応できるよう隔離水界の改造を行った。かいぼりは池全面ではなく一部の面を残しての実施となった。そのため、池の一部に鋼管矢板遮水壁が設けられることとなり、その適正な場所として当初隔離水界の設置予定場所が挙がった。したがって、平成25年度には、隔離水界が設置できず、隔離水界中におけるMicrocystisの細胞群体解体の有無による微生物相および水質の経日変化の測定と、モデル生態系構築に起用する微生物の隔離水界からの分離は達成できなかった。当該実験は平成24年度に予備的に行い、平成25年度で本番を迎えることとしていたが、上記の理由により平成26年度に繰り越すことになった。以上より、平成25年度の達成度は十分でなく、所期の計画に対し約50%と評価せざるを得ない。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度には隔離水界を用いた実験を重点的に行う。平成25年度は実験フィールドにおけるかいぼりおよび事前工事のため隔離水界の実験は平成26年度に繰り越しとなったが、平成25年度には隔離水界のモニタリング等に必要な水質測定法、微生物の分離、分類・同定技術および分子生物学的解析(DNA前処理・抽出、16s rDNA・18s rDNAのシーケンスなど)の実験プロトコルについてはおおむね完成しているので、室内実験で発生した凍結保存試料や隔離水界から発生する試料を随時測定していくことで所期の目標に応じた研究成果を上げる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に実験フィールド(井の頭公園池)において「かいぼり」が実施された。かいぼりは池全面ではなく矢板遮水壁を設けることで一部の面を残して実施されることにとなった。矢板遮水壁は当初隔離水界の設置を予定していた場所に設置された。そのため平成25年度は、隔離水界におけるMicrocystisの細胞群体解体の有無による微生物相および水質の経日変化の測定と、モデル生態系構築に起用する微生物の分離は平成26年度に繰り越すことになった。したがって、平成25年度は隔離水界の測定と微生物分離に係る機材や試薬類を調達する必要がなかった。 平成26年度に、平成25年度に実施できなかった隔離水界におけるMicrocystisの細胞群体解体の有無による微生物相および水質の経日変化の測定と、モデル生態系構築に起用する微生物の分離を繰り越して行うこととした。そのため平成25年度に予算化されていた当該機材および試薬類(ディスポシャーレ、水質分析試薬、ディスポピペット、ディスポキュベットなど)を平成26年度に調達し測定と分離に使用することとなった。
|