研究課題/領域番号 |
24560669
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
岩見 徳雄 明星大学, 理工学部, 准教授 (00353532)
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研究分担者 |
清水 和哉 東洋大学, 生命科学部, 講師 (10581613)
板山 朋聡 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80353530)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Microcystis / 細胞群体解体 / 捕食微小動物 / 隔離水界 / 個体群動態 / 分子生態学 |
研究実績の概要 |
本研究で実験フィールドとしている井の頭公園池で平成26年1月半ばから同年2月末まで実施された池のかいぼりの影響で同年の夏季にMicrocystisの発生は認められなかった。そのため本年度に予定していた隔離水界の設置と微生物および水質モニタリングは不可能と判断し、本研究の補助事業期間延長承認を受け隔離水界実験を平成27年度に見送ることとした。そのため、平成26年度は所期の計画に挙げた分離微生物の培養実験とともに、井の頭公園池の水質として硝酸態窒素が高濃度であることを踏まえ、Microcystisのmicrocystin産生に及ぼす硝酸態窒素の影響と、井の頭池のMicrocystis増殖ポテンシャルを調べ、Microcystisと微小動物の捕食・被食-動態を解析するためのデータを得ることとした。平成24年度に分離した原生動物鞭毛虫類Monas sp.と細胞群体解体後のMicrocystisとの混合培養実験の結果、Monas sp.が捕食しきれず残存したMicrocystisの細胞は本来の細胞群体と異なる形態を示すことがわかった。Microcystisのmicrocystin産生に対する硝酸態窒素濃度の影響としては、増殖過程における総Microcystis量とmicrocystin量との割合の変化には、硝酸態窒素制限状態や同種の競合はさほど影響せず、種そのものの持つmicrocystin産生能が大きく影響することが明らかとなった。井の頭池のMicrocystis増殖ポテンシャルについては、池水に約5mg/Lの濃度で硝酸態窒素が存在していることに加え、底泥からのリン酸態リンの溶出も認められ、さらにMicrocystisを用いたAGP試験の結果からも、Microcystis増殖ポテンシャルはかいぼり前とさほど変わっていないことが明らかとなった。平成26年の夏季の井の頭池ではMicrocystisの発生は認められなかったが、秋季からは微細藻類のバイオマスが増加する傾向が認められた。夏季にMicrocystisの発生が抑制された要因に一つとして、生産者を起点とする食物網の一時的な変化であることが挙げられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実験フィールドとしている井の頭公園池において平成26年1月半ばから同年2月末までかいぼりが実施され、その影響で当初想定していたMicrocystisの発生が夏季に認められなかったため、隔離水界を設置できず、隔離水界中におけるMicrocystisの細胞群体解体の有無による微生物相および水質の経日変化の測定と、モデル生態系構築に起用する微生物の隔離水界からの分離は達成できなかった。しかしながら、本研究で目的としているMicrocystisの細胞群体解体による出現捕食者の動態解析に必要な基礎データのいくつかは室内実験により得ることができた。平成26年度に実施予定であった隔離水界のモニタリングは補助事業期間延長承認を受け平成27年度に繰り越すことになった。以上より、平成26年度の達成度は十分でなく、所期の計画に対し30%程度と評価している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は隔離水界を用いた実験を重点的に行う。平成26年度は実験フィールドにおいてかいぼりが実施され、その影響によって隔離水界の実験は平成27年度に繰り越しとなったが、これまで隔離水界のモニタリング等に必要な水質測定法、微生物の分離、分類・同定技術および分子生物学的解析(DNA前処理・抽出、16s rDNA・18s rDNAのシーケンスなど)の実験プロトコルについてはほぼ完成しているので、室内実験で発生した凍結保存試料や隔離水界から発生する試料を随時測定していくことで所期の目標に応じた研究成果を上げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は実験フィールドにおいてかいぼりが実施され、その影響のため補助事業期間延長承認を受けて隔離水界の実験は平成27年度に繰り越すこととなった。したがって、平成26年度は、隔離水界におけるMicrocystisの細胞群体解体の有無による微生物相および水質の経日変化の測定と、モデル生態系構築に起用する微生物の分離は平成27年度に実施することになった。以上の理由により、平成26年度は隔離水界の測定と微生物分離に係る機材や試薬類を調達する必要がなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に実施できなかった隔離水界におけるMicrocystisの細胞群体解体の有無による微生物相および水質の経日変化の測定と、モデル生態系構築に起用する微生物の分離を平成27年度に繰り越して行うこととなった。それに伴い平成26年度に予算化されていた当該機材および試薬類(ディスポシャーレ、水質分析試薬、ディスポピペット、ディスポキュベットなど)は平成27年度に調達し、所期の計画どおりの測定と分離に使用する。
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