本研究の目的は建設重機等により発生した地盤環境振動を地盤上で対策するためのTMD制御に関する設計技術を確立することである。建設振動対策として防振溝や防振壁などが研究されているが,いずれも地中に設置する大規模な対策であるため,期間が限定されている建設工事に適用するには対策規模やコストの面で課題がある。そこで,TMDによる地盤振動制御工法の開発を着想した。TMDを用いることで建設作業で問題となりやすい4~10Hzの地盤振動を低減でき,設置規模も従来の対策工法に比べて小規模となる。 平成24年度は建設工事による地盤環境振動の性状を実際の施工現場で調査し,油圧シャベルの走行,掘削,埋戻し,バケットのあおり,およびダンプトラックの走行に伴う周辺地盤における卓越振動数と応答振幅,幾何減衰性状や内部減衰を明らかにした。 平成25年度は平成24年度の研究成果に基づき,建設工事では比較的大きな振動を発生する油圧シャベル走行時の振動を対象としたTMDによる振動制御効果について,TMD質量,TMD減衰,TMDの大きさ,および制御振動数に着目して解析的に検討した。その結果,制御対象振動数に同調させたTMDを地盤上に設置することでTMDの共振によって振動低減効果を得る領域があることを確認した。このとき,TMD質量は大きいほど,減衰は小さいほど,TMD装置の大きさがおおきいほど制御効果が大きくなることを明らかにした。また,制御対象振動数が高くなるほど効果が大きくなることも明らかにした。 平成26年度はTMD装置を製作しバックホウ作業を対象とした振動制御効果を現場実験で検証した。その結果は,平成25年度に実施した解析的検討の結果を裏付けるものであり,制御効果はTMD質量,減衰,制御対象振動数とTMDの共振周波数の比に大きく関係することが明らかとなった。
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