昨年度までの研究成果から本年度は,鉄骨部材(以下,S部材という)が鉄筋コンクリート部材(以下,RC部材という)に直交して埋め込まれるト形接合部において,S部材の埋込み長さがRC部材せいの7割以下となる場合の応力伝達機構を解明することを目的し,接合部の終局耐力評価の一つである支圧耐力に及ぼすRC部材せいとS部材の埋込み長さの比およびRC部材幅のS部材幅の比の影響について実験的検討を行った。 試験体は実大の約1/2の平面ト形試験体とし5体製作した。RC部材に鉄骨部材が直交して埋め込まれる形状とした。一般にRC柱S梁接合部では,接合部の鉄骨に補強が施されることが多いが,鉄骨部材からRC部材への応力伝達機構を単純に評価するために,本研究では鉄骨部材に補強は施していない。また,昨年度までの結果から,最大耐力はト形接合部においてもS部材がRC部材を貫通する直交接合部の支圧耐力式に基づいた評価法によって評価できるので,その評価法における支圧耐力を明確にするために,柱梁接合部の内部要素から外部要素へのねじりモーメントを絶縁した試験体を作成した。試験体は全て接合部の破壊を想定し設計を行った。加力はS部材モーメント反曲点位置に正負漸増水平方向繰り返し強制変位を与えた。加力実験結果より以下の知見を得た。S部材の埋込み長さがRC部材せいの半分程度以下になると,S部材埋込始点の引張側コンクリートが掻出し破壊に至ることが明らかにされた。また,接合部の内部要素の耐力は,RC部材せいの相違が及ぼす影響は見られず,鉄骨部材の埋込み長さの絶対値を用いて評価できる。また,これらの実験的知見に基づいたコンクリートの支圧耐力式および掻き出し破壊耐力式による内部要素の耐力評価法によって,計算値は精度よく実験値を評価できることが示された。
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