本研究の目的は、鋼構造の柱梁接合部について、現行のものと比較して同等の耐震性能を保有しつつ、経済性を向上した柱梁接合部を開発することであった。現在、角形鋼管を柱に使用した鋼構造形態が主流であるが、H形鋼を柱に使用することで、施工手順を簡略化できることは明らかである。開断面であるH形鋼は、閉断面である鋼管と異なり、水平補剛材を設ける際に切断する必要がなく、格段に加工しやすい。実際に、角形鋼管が普及する前は、全ての鋼構造がH形鋼柱で構成された。また、諸外国では、いまも角形鋼管でなくH形鋼が柱材の主流である。一方で、わが国の設計環境では、柱の四面に梁を剛接合する必要があるが、現行の基準は、H形柱のフランジへの接合を規定するが、H形柱のウェブへの接合については、国内外の研究データが限られている。そこで、本研究では、構造実験と数値解析によって、H形柱と梁の接合部の耐震性能を評価した。H形柱のフランジへの接合とウェブへの接合を検証するため、二体の実大試験体について繰り返し載荷実験を実施した。柱向きに関わらず,二つの試験体は、角型鋼管柱への接合と遜色のない性能を示した。ただ、柱ウェブに接合した場合,初期剛性が10%小さく,塑性化後は,柱ウェブと水平スチフナの面外変形が層間変形に寄与する。また、精緻な有限要素法解析により、実験結果を精度よく再現することに成功した。実験と解析の両方の結果から、柱ウェブへの接合は,梁フランジと柱スチフナの突合せ溶接部が破断に起点となりやすいことが分かった。
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