研究課題/領域番号 |
24560677
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
平島 岳夫 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20334170)
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キーワード | 鋼構造 / 耐火性 / 接合部 / 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究の目的は、火災時における高力ボルト継手(以下,継手)の耐力・変形・破断に関する挙動を実験から明らかにし、その挙動を数値解析プログラムに組み込むための構成要素モデルを構築し、鋼骨組内部にある高力ボルト接合部の火災時・冷却過程における破断条件を明らかにすることである。2年目の平成25年度は,以下4つの成果を得た。 (1)継手の高温時最大耐力: 初年度における継手の高温引張実験20体の結果と高温素材試験結果との比較から,継手の高温時最大耐力に及ぼす変形速度の影響を指摘した。これより,継手の最大耐力算定に用いるための鋼板材およびボルトの高温時引張強度を検討するため,一定荷重化における温度漸増実験18体を追加実験として実施した。 (2)継手の変形能力: 初年度の実験では,ボルト破断型継手よりもはしぬけ破断型継手の変形能力が大きくなることと,一方で高温になると板厚が薄い場合でもボルト破断モードに変わる可能性が示された。これより,高温時においてもはしぬけ破断挙動を示す試験体を用いた追加実験10体を行い,より精度の高い構成要素モデル(Component-based model)の提案に必要なデータを取得した。また火災冷却時におけるウェブ継手の破断防止については,海外の研究に昨年度実験の知見に基づく提案を公表した。 (3)継手の挙動を数値解析プログラムに組み込むための構成要素モデル: 初年度の実験に追加実験結果を加えて,継手単体における構成要素モデルを再構築し,また梁継手への拡張モデルを構築した。火災応答フレーム解析プログラムへの適用では,継手の剛性行列に関わるサブルーチンおよび関連部分を整理するため,流れ図の作成を実施した。 なお,予定を変更して追加実験を実施したため,本年度当初に予定していたソリッド要素を用いた有限要素解析(ABAQUS)による検討は来年度に実施することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書の研究目的では,研究機関内に明らかにすべき項目として次の4つを記載した。(1)高力ボルト接合部のディテールと高温時・冷却過程における耐力・変形・破断性状の関係。(2)高力ボルト梁継手の高温引張実験に基づく、高力ボルト接合部の火災時構成要素モデルの提案。(3)保有耐力接合された高力ボルト摩擦接合継手の火災時および冷却過程における性能。(4)小梁のウェブ接合に関する破断条件(接合部ディテール・周辺拘束の影響,冷却過程の検討)。このうち,昨年度では(1)と(2)の項目が概ね明らかにされ,今年度は,(1)の耐力に関して追加の知見を得て,(2)のモデルを再構築し,(3)と(4)についても実験結果の考察から得られた知見を公表した。 交付申請書における研究計画・方法では,平成25年度以降の実施項目として次の3つを記載している。(1)継手モデルの火災応答フレーム解析への適用,(2)接合部を含む鋼骨組の火災時挙動に関するケーススタディー,(3)火災時および冷却過程における高力ボルト接合部の破断条件。このうち(1)の解析プログラムの整備(完成)までを本年度までの目標にしていたが,追加実験の実施ならびに本研究協力学生の進学失敗などがあり,プログラムの流れ図(設計図)作成(70%位)にしか至っていない。他方,予定を変更して追加で行った一定荷重下での温度漸増実験から,継手の高温時最大耐力に関する重要な知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,いち早く火災応答フレーム解析プログラムに継手モデルを組み込んだものを完成させ,今年度に追加で実施した温度漸増実験ならびに既往に実施した実験などとの比較からモデルの妥当性を示し,鋼骨組のケーススタディーまで実施したい。冷却過程における高力ボルト接合部の破断条件について,推奨ディテールの提案は実験結果による考察から概ねできているが,周辺部材からの拘束の影響は解析によって検討する予定である。今後は,火災応答フレーム解析とAbaqus解析の結果から,高力ボルト継手の火災加熱時および冷却時における挙動を示し,周辺部材からの拘束の影響に関する知見を示したい。
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