研究課題/領域番号 |
24560678
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
野口 博 工学院大学, 工学部, 教授 (20107535)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超高強度コンクリート / 鉄筋コンクリート / 鋼繊維補強 / 柱・梁接合部 / 立体架構 / FEM解析 / 損傷度評価 / 可視化 |
研究概要 |
超高層RC建物に必要な超高強度コンクリートの信頼性向上のために鋼繊維補強が重要であり、その補強効果として、コンクリートの引張強度、引張塑性能力の向上によるひび割れ分散効果が考えられ、FEM解析による抵抗機構の合理的な理解が求められている。本研究では、鋼繊維補強の部材の耐力劣化、変形能力への寄与度とその抵抗機構をFEM解析により検討し、実験結果と比較、検証する。 1.FEM解析モデルの高度化:(1)鋼繊維補強のモデル化:基礎実験に基づく引張特性の改善により、ひび割れの分散性の再現を可能とした。(2)応力センサー付き付着モデル:柱・梁接合部、梁、柱等の主要部材で重要となる付着モデルを抜本的に見直し、鉄筋周辺のコンクリートの3次元応力状態を刻々付着特性に反映するセンサー付きの付着モデルを新たに開発している。 2.解析結果の視覚化と損傷度評価:解析結果の圧縮主応力は凡そのひび割れ方向を示すので、実験でのひび割れと対比させる。又、圧縮歪集中部と実験での圧縮破壊部を対比して、圧縮損傷度を検討する。鉄筋やコンクリート、鋼繊維、付着要素の累積吸収歪エネルギーを求め、総和としてのRCの全歪エネルギーの推移と、鉄筋、コンクリート、鋼繊維、付着要素、個々の素材の集中度の推移の評価により、RC部材の損傷度の総合的な定量的評価を可能とする。 3.立体架構での部材間の相互作用:立体架構の中での部材間相互作用に着目した3次元FEM解析を行った。(1)1方向加力時柱・梁接合部等の単体挙動と、立体架構内各部材挙動の差異の解析、(2)2方向同時加力時の柱・梁接合部の単体挙動と立体架構内各部材の挙動の差異の解析
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
鋼繊維補強のモデル化については、基礎実験に基づく引張特性の改善により、ひび割れの分散性の再現を可能とした。鋼繊維補強を鉄筋、コンクリート、付着とともに吸収歪エネルギーで評価し、より高い合理性を追求した。 応力センサー付き付着モデルの開発については、柱・梁接合部、梁、柱等の主要部材で重要となる付着モデルを抜本的に見直し、鉄筋周辺のコンクリートの3次元応力状態を刻々付着特性に反映するセンサー付きの付着モデルを新たに開発している。 解析結果の視覚化と損傷度評価については、解析結果の圧縮主応力は凡そのひび割れ方向を示すので、実験でのひび割れと対比させている。又、圧縮歪集中部と実験での圧縮破壊部を対比して、圧縮損傷度を検討している。鉄筋やコンクリート、鋼繊維、付着要素の累積吸収歪エネルギーを求め、総和としてのRCの全歪エネルギーの推移と、鉄筋、コンクリート、鋼繊維、付着要素、個々の素材の集中度の推移の評価により、RC部材の損傷度の総合的な定量的評価を可能とする。 立体架構での部材間の相互作用については、立体架構の中での部材間相互作用に着目した3次元FEM解析を行った。(1)1方向加力時柱・梁接合部等の単体挙動と、立体架構内各部材挙動の差異の解析、(2)2方向同時加力時の柱・梁接合部の単体挙動と立体架構内各部材の挙動の差異の解析、2方向同時加力時に、立体的損傷領域の拡大進展状況を視覚的に把握し、耐力劣化、塑性変形や吸収歪エネルギーの加速化を解析的に追及した。
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今後の研究の推進方策 |
1.立体架構での部材間の相互作用:多方向加力時の柱・梁接合部等の単体挙動と立体架構内の各部材の挙動の差異の解析検討:1方向加力や2方向同時加力と対比させて、多方向加力の場合の曲げ降状や圧縮破壊の発生順や進行度等を比較し、また部材間相互作用の基準加力時の場合との相違点や、損傷領域の拡大の進行度の差異も検討する。 2.部材の耐力劣化が部材の損傷度に与える影響:耐力劣化が部材の終局や安定の限界状態に与える影響を提示できれば、今後の設計に大いに役立つ。現在の部材性能評価法で想定しているのは復元力特性の包絡線だけであり、合理的な部材の性能評価を目指すためには、地震動の繰り返しによる部材の性能劣化を表す損傷度の定量化が、今後不可欠である。部材の損傷度の定量化の合理的な根拠を示すために、横補強筋量(間隔とディテール)の拘束効果、かぶりコンクリートの剥離、圧縮鉄筋の座屈等どの解析モデルを組込んだ3次元FEM解析モデルの役割は大きい。 3.部材の耐力劣化・損傷度が建物全体の損傷度に与える影響:この影響を定量化できれば、建物の地震応答解析に組み込み、部材の耐力劣化・損傷度が建物全体の損傷度に与える影響を検討することも可能となる。 4.鋼繊維補強効果を陽に取り込んだ損傷度評価型耐震設計法の開発と提案: 応募者の最新の研究成果では、超高強度RC柱での鋼繊維補強効果としてのひび割れ抑制やひび割れ分散性が、解析と木村らの実験との比較から再現できた。さらなる解析モデルの高度化と損傷度評価により、鋼繊維補強効果を陽に取り入れた損傷度評価型のより合理的な耐震設計法の開発と提案を行う。 5.研究成果の公開: 解析及び部材から建物までの損傷度定量化の研究経過・成果報告をWeb上で公開し、研究者との共有化を図り、WebとDVD報告書により内外の研究者や社会に研究成果を有効に発信する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、3次元非線形有限要素法による解析的研究のため、膨大な数値データを高速演算処理できる科学技術計算用PCワークステーションを前年度の科研費で購入し田茂のを使用する。膨大なデータを扱うFEM解析では、入力データの作成ならびに出力データの効率的処理が必須作業であり、3次元解析の膨大な数値データを正確かつ効率的に扱うには、視覚化に優れたプレポストソフトが必要であり、数値データの視覚化が重要である。その中で、MIDAS社のプレポストソフトは、GUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェイス)が非常に優れており、直感的に操作できる。また、RC構造のFEM解析を対象として使いやすいMIDAS社のプレポストソフトの導入は、本研究遂行に対して非常に有用であり、本ソフトの保守費が必要である。 その他、データ処理用DVD、成果発表のための旅費、研究補助費、印刷費、カラー複写費等が必用である。
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