研究課題/領域番号 |
24560678
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
野口 博 工学院大学, 工学部, 教授 (20107535)
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キーワード | 超高層RC建物 / 鋼繊維補強 / FEM解析 / 立体架構 / 耐力劣化 / 塑性変形 / 部材損傷度 / 多方向地震入力 |
研究概要 |
超高層RC建物に必要な超高強度コンクリートの信頼性向上のために鋼繊維補強が重要であり、その補強効果として、コンクリートの引張強度、引張塑性能力の向上によるひび割れ分散効果が考えられ、FEM解析による抵抗機構の合理的な理解が求められている。本研究では、鋼繊維補強の部材の耐力劣化、変形能力への寄与度とその抵抗機構をFEM解析により検討し、実験結果と比較、検証した。 1)立体架構での部材間の相互作用①多方向加力時の柱・梁接合部等の単体挙動と立体架構内の各部材の挙動の差異の検討:1方向加力や2方向同時加力(45度加力)と対比させて、多方向加力の場合の曲げ降状や圧縮破壊の発生順や進行度等を比較し、また部材間相互作用の基準加力時の場合との相違点や、損傷領域の拡大の進行度の差異も検討した。(担当: 野口、和泉、柏崎) ②単体と立体架構内での偏心柱・梁接合部の偏心接合の影響度の解析検討:偏心柱・梁接合部単体と立体架構内との違いを検討した。立体架構では、周辺部材の拘束により単体の場合よりも偏心の影響が緩和されることも想定される。(担当:和泉、柏崎、院生) 2)円弧周回型多方向水平加力時の立体架構の耐力劣化と塑性変形、部材損傷度の解析 ①立体架構での多方向水平加力時の部材の耐力劣化、塑性変形の加速機構の検討:2層2スパンの立体架構において、1方向加力、2方向同時加力、円弧周回型のような多方向水平加力の順に3次元FEM解析により検討し、既往の実験結果とも比較し、解析モデルの検証を行った。単純な1方向や2方向同時加力に比べ、多方向加力の場合の曲げ降状や圧縮破壊の発生順や進行度等を比較し、損傷領域の拡大の進行度の差異も検討した。(担当: 野口、和泉、柏崎)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
鋼繊維補強の部材の耐力劣化、変形能力への寄与度とその抵抗機構をFEM解析により検討し、実験結果と比較により、解析モデルの信頼性が検証できた。 1)立体架構での部材間の相互作用①多方向加力時の柱・梁接合部等の単体挙動と立体架構内の各部材の挙動の差異の検討:1方向加力や2方向同時加力(45度加力)と対比させて、多方向加力の場合の曲げ降状や圧縮破壊の発生順や進行度等を比較した。また部材間相互作用の基準加力時の場合との相違点や、損傷領域の拡大の進行度の差異も検討できた。 ②単体と立体架構内での偏心柱・梁接合部の偏心接合の影響度の解析検討:偏心柱・梁接合部単体と立体架構内との違いを検討できた。立体架構では、周辺部材の拘束により単体の場合よりも偏心の影響が緩和されることも示せた。 2)円弧周回型多方向水平加力時の立体架構の耐力劣化と塑性変形、部材損傷度の解析 ①立体架構での多方向水平加力時の部材の耐力劣化、塑性変形の加速機構の検討:2層2スパンの立体架構において、1方向加力、2方向同時加力、円弧周回型のような多方向水平加力の順に3次元FEM解析により検討し、既往の実験結果とも比較し、解析モデルの検証が行えた。単純な1方向や2方向同時加力に比べ、多方向加力の場合の曲げ降状や圧縮破壊の発生順や進行度等を比較し、損傷領域の拡大の進行度の差異も検討できた。
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今後の研究の推進方策 |
1)部材の耐力劣化が部材の損傷度に与える影響: 耐力劣化が部材の終局や安定の限界状態に与える影響を提示できれば、今後の設計に大いに役立つ。現在の部材性能評価法で想定しているのは復元力特性の包絡線だけであり、合理的な部材の性能評価を目指すためには、地震動の繰り返しによる部材の性能劣化を表す損傷度の定量化が、今後不可欠である。部材の損傷度の定量化の合理的な根拠を示すために、横補強筋量(間隔とディテール)の拘束効果、かぶりコンクリートの剥離、圧縮鉄筋の座屈等どの解析モデルを組込んだ3次元FEM解析モデルの役割は大きい。(担当:和泉、柏崎、院生) 2)部材の耐力劣化・損傷度が建物全体の損傷度に与える影響:この影響を定量化できれば、建物の地震応答解析に組み込み、部材の耐力劣化・損傷度が建物全体の損傷度に与える影響を検討することも可能となる。建物全体をミクロFEM解析で解くこともPCの発展により可能となってきており、本研究でも解析を試みる。(担当:野口、和泉、柏崎) 3)研究成果の公開:実験・解析及び部材から建物までの損傷度定量化の研究経過・成果報告を逐次Web上で公開し、研究者との共有化を図り、WebとDVD報告書(和・英文)により内外の研究者や社会に研究成果を有効に発信する。(担当:野口、和泉、柏崎)
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度の研究計画は、予定通り、達成でき、研究成果も論文発表や講演により、とりまとめは十分に行えたが、研究経費については、計画の見直しもあって残額が生じたもので、最終年度にあたる次年度のとりまとめの研究に活用する。 1)部材の耐力劣化が部材の損傷度に与える影響: 現在の部材性能評価法で想定しているのは復元力特性の包絡線だけであり、合理的な部材の性能評価を目指すためには、地震動の繰り返しによる部材の性能劣化を表す損傷度の定量化が、今後不可欠である。部材の損傷度の定量化の合理的な根拠を示すために、横補強筋量の拘束効果、かぶりコンクリートの剥離、圧縮鉄筋の座屈等どの解析モデルを組込んだ3次元FEM解析モデルの役割は大きい。 2)部材の耐力劣化・損傷度が建物全体の損傷度に与える影響:この影響を定量化できれば、建物の地震応答解析に組み込み、部材の耐力劣化・損傷度が建物全体の損傷度に与える影響を検討することも可能となる。建物全体をミクロFEM解析で解くこともPCの発展により可能となってきており、本研究でも解析を試みる。
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