研究課題/領域番号 |
24560680
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
磯 雅人 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60377471)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 片側袖壁付き柱 / 拘束筋 / PVA-FRC / 靭性 / 損傷 / スケルトンカーブ |
研究実績の概要 |
袖壁付き柱は,独立柱に比べて剛性,耐力は高いものの,その後の性状は極めて脆性的である。そのため,その部材の破壊が建物全体の耐震性能に大きく影響を及ぼす可能性がある。以上の理由から現設計では,上記問題を回避するために袖壁にスリットを設けて,見掛け上,独立柱の挙動となるように設計が行われている。しかしながら,阪神淡路大震災では,そのようにスリットを設けた建物が大きく損傷して残留変形が残り,その後に,建物の使用ができずに解体したケースも見られ,大地震時においても建物の変形や損傷を制御することの必要性が喚起された。 そこで上記問題の解決案の1つとして,従来,脆性部材とされた袖壁付きRC柱に高い靱性を付与させ,損傷を軽減できるならば,上記問題を解決できる可能性がある。さらに,その構造性能評価ができればスリットを入れる必要が無くなり施工面への負担も軽減できる。以上,本研究では地震時の損傷を軽減でき,高い靭性能を備えた片側袖壁付きRC柱の開発を行うと同時に,構造実験により,その構造性能を明らかにし,その設計手法を開発する。 以上の目的を達成させるために平成26年度は,平成24,25年度の構造実験より得られた実験データを分析し,「損傷低減・高靭性型片側袖壁付きRC柱」の荷重-変形スケルトンモデルを提案した。本モデルは,曲げ変形,せん断変形,主筋の抜け出し変形を累加したものである。各特異点の剛性,耐力,変形の評価は,RC規準,技術基準,RC耐震診断基準等に示されている既往の評価式により行い,その計算値と実験値との比較・検証を行い,その精度を示した。なお,各種耐力,剛性,変形の評価は,曲げひび割れ耐力,せん断ひび割れ耐力,曲げ終局耐力,せん断終局耐力,弾性剛性,降伏時剛性,限界変形角について行った。 以上の検討の結果,提案した荷重-変形スケルトンモデルは実験値の荷重-変形包絡線を概ね評価できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は,地震時での損傷が甚大で,かつ,変形性能が極めて脆性的である袖壁付きRC柱の性能を大きく改善し,損傷を軽減でき,かつ,靱性能に優れた性能に改善することである。 平成26年度は,平成24,25年度の構造実験より得られた実験データを分析し,「損傷低減・高靭性型片側袖壁付きRC柱」の荷重-変形スケルトンモデルを提案した。しかしながら,実験棟の改築工事等の影響により,平成26年度に予定していた推奨配筋を有する「損傷低減・高靭性型片側袖壁付きRC柱」の曲げせん断実験を遅らせる必要がでてきた。そのため,その荷重-変形と上記提案モデルとの比較・検証を行うことができず,計画を1年延長することとした。 以上より,本研究は「やや遅れている。」と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,平成26年度に検討・提案した「損傷低減・高靭性型片側袖壁付きRC柱」の荷重-変形スケルトンモデルの妥当性を検証する。そのため,本研究で開発された推奨配筋を有する「損傷低減・高靭性型片側袖壁付きRC柱」について曲げせん断実験を行い,上記モデルとの比較を行い,その妥当性について検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に,実験を行う予定であったが,旧実験棟が解体され,平成26年4月に新しい実験棟が完成したばかりであり,本実験を行うための設備が現段階で整っていない状況である。このため,計画を変更し,平成27年度に実験を行うこととした。そのため,未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度行う実験のための経費に充てる。
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