本研究の目的は損傷を軽減でき,高い靭性を付与した片側袖壁付きRC柱(以下,損傷低減・高靭性型片側袖壁付きRC柱)を開発し,その設計法を提案することである。損傷を軽減させ,靭性を向上させるアイデアはコンクリートの代替としてPVA繊維補強コンクリート(以下,PVA-FRC)を使用し,袖壁の圧縮端部を円形スパイラル筋で拘束することである。 平成24,25年度では,そのアイデアを検証するために,その曲げせん断実験を実施し,以下の知見を得た。①コンクリートの代替としてPVA-FRCを使用した試験体は繊維無しの試験体に比べて,ひび割れによる損傷を軽減できることが分かった。②袖壁端部に円形のスパイラル筋を配した試験体は,拘束筋が無いものに比べて靱性能が向上し,さらに,袖壁端部拘束筋の降伏点強度を高めることにより,袖壁が圧縮となる加力側の靭性能を向上できることがわかった。③袖壁端部拘束筋の補強範囲は脚部より2.5t(t:袖壁厚さ)程度とし,さらに,柱と袖壁境界部側の袖壁部にも拘束筋を配置することにより,最大耐力後の耐力低下が軽減される傾向が認められた。 平成26年度は平成24,25年度の構造実験より得られた実験データを分析し,本開発部材の荷重-変形スケルトンモデルを提案した。 最終年度は以上の知見をまとめて損傷低減・高靭性型片側袖壁付きRC柱の推奨配筋を袖壁内・外端部の2.5t(t:袖壁厚さ)の範囲のみを高強度の円形スパイラル筋で拘束する仕様と定め,それを検証するための曲げせん断実験を実施した。その結果,従来の配筋に比較して,損傷を軽減でき,靭性を向上できることが確認された。さらに,平成26年度に提案されたモデルは実験の荷重-変形を概ね推定できたことから,その設計法の妥当性も検証できたと言える。以上より,本研究成果は袖壁付きRC柱がもつ高い剛性と耐力,そしてエネルギー吸収能力を活かした設計が可能となることを意味し,設計法および施工の発展に大きく寄与するものと考えられる。
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