研究課題/領域番号 |
24560682
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田川 浩 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70283629)
|
キーワード | 山形鋼 / ブレース / 接合部補強 / 圧縮補強 / 載荷実験 / 耐力評価 / ガセットプレート / 剛性評価 |
研究概要 |
鋼構造建築物において多く用いられている山形鋼ブレースの劣化挙動を防止し変形性能を向上させるために,ブレースと同一の山形鋼を端部に溶接する新しい補強方法に関する研究を進めている。この補強方法は接合部補強と圧縮補強の両方を想定している。これまで圧縮補強効果を明らかにするために,ブレース断面と補強長さが異なる12ケースの圧縮載荷実験結果を分析している。さらに,端部補強されたブレース部材の圧縮耐力評価式を導出し,実験および有限要素解析結果と耐力を比較することで十分な評価精度を有することを確認している。また,繰返し載荷時の挙動に関する実験的研究を行い,提案補強法による高力ボルト接合部の補強効果や過剰な補強により望ましくない挙動を呈する可能性があることを明らかにしている。以上の研究では提案する補強形式の基本特性を明らかにするために,ガセットプレートに大きな剛性を与えている。 提案する補強方法の効果に及ぼすガセットプレート変形の影響を明らかにするためには,ガセットプレートの面外剛性評価式による検討が有効である。まず既存の剛体バネモデルに基づく剛性評価式を導出するとともに,評価精度を明らかにするためにガセットプレート接合部に対する載荷実験を実施した。実験結果を分析したところ剛性を小さく評価する傾向が顕著であった。その原因として溶接部およびブレース設置部の剛性が高くなることを考慮していないことが考えられた。そこで新たに片持ち板モデルを構築しそれに基づく剛性評価式を導出し実験結果と比較したところ評価精度の向上が見られた。さらに,実験では端部補強によりガセットプレートのねじれ挙動が抑制されることも明らかとなった。また,形鋼ブレースを既存柱梁架構に設置する際に有用となると考えられる組立補強材を用いた柱梁接合部について検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次に示す各項目を遂行していることから本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。 (1)これまでに考慮していなかったガセットプレート構面外挙動が補強効果に及ぼす影響を分析するために必要となる構面外剛性評価式を導出している。 (2)構面外剛性評価式の導出のために新しく片持ち板モデルを構築している。 (3)剛性評価式の精度が既存のモデルを用いた場合よりも向上することをガセットプレート接合部の載荷実験を通じて明らかにしている。 (4)形鋼ブレースを柱梁架構の改修時等に設置する際に適用可能な組立補強材による柱梁接合部の性能を明らかにしている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究により構築された形鋼ブレースを接合するガセットプレート構面外剛性評価式に着目し,ブレース端部補強の設計法構築に向けた研究を進める。まず有限要素解析により境界条件が剛性評価式の精度に及ぼす影響を明らかにする。続いて載荷実験によりガセットプレート構面外挙動が補強効果および変形性能に及ぼす影響を明らかにするとともに補強部材の設計に必要なデータを得る。柱梁架構への補強ブレース設置のためのガセット接合部剛性を増大させる方法を検討する。以上の研究をまとめ提案するブレース補強設計法を整備する。
|