鋼構造建築物において多く用いられている山形鋼ブレースの劣化挙動を防止し変形性能を向上することを目的として,ブレースと同一の山形鋼を端部に溶接する補強方法を検討した。この補強方法では接合部補強と圧縮補強の両方を想定している。まず,圧縮補強効果を明らかにするために,ブレース断面と補強長さが異なる12ケースの圧縮載荷実験結果を分析した。端部補強されたブレース部材の圧縮耐力評価式を導出し,実験および有限要素解析結果と評価耐力を比較することで十分な評価精度を有することを確認した。また,繰返し載荷実験を行い,提案補強法による高力ボルト接合部の補強効果を実証するとともに,過剰な補強により望ましくない挙動を呈する可能性があることを明らかにした。さらに,引張載荷時の補強効果を確認するために,単調引張載荷実験および有限要素解析を行った。無補強の場合にはボルト孔で破断するのに対して,提案補強により母材破断となり引張耐力が上昇することを確認した。補強部材溶接部に応力集中する傾向が見られ施工時に留意する必要がある。 提案補強法はガセット剛性が高いほど効果を発揮するが,補強効果に及ぼす接合ガセットプレートの面外剛性の影響を明らかにするため,ガセットプレートの面外剛性評価式を検討した。既存の剛体バネモデルに基づく剛性評価式と新たに片持ち板モデルを構築しそれに基づく剛性評価式を導出した。ガセットプレート面外変形に関する載荷実験を実施し,剛体バネモデルでは剛性を小さく評価する傾向があること,片持ち板モデルにおいて評価精度の向上が見られること,さらに端部補強によりガセットプレートのねじれ挙動が抑制されることを明らかにした。また,耐震補強時等に提案補強が施されたブレースを既存柱梁架構に設置する際に有用となる組立補強材を用いた接合形式についても検討を行った。
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