研究課題/領域番号 |
24560695
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
北原 昭男 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (00195273)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 木造建物 / 伝統的構法 / 地域特性 / 耐震性能 / 構造実験 / 構造調査 |
研究概要 |
熊本あるいはその近郊に存在する伝統的構法による建物に関して、地元の設計者・施工者からの意見を参考にしつつ、典型的・代表的な建物・建物群を抽出した。その中から当面の調査対象地域・建物として、熊本市旧市街地における商家・町屋群、熊本周辺の中山間地域に存在する民家建築群、天草市に存在する漁村建築群、県南の温泉地に存在する木造3階建て建物、熊本・山鹿に存在する造り酒屋などの大規模な木造建物を選定した。 本年度は、熊本市旧市街地に存在する町屋建築10棟および周辺中山間地域である山都町に存在する民家建築5棟に関して現地における構造調査を行い、各建物の構造的・構法的特長、老朽度等についてデータの収集・整理を行った。また、得られたデータをもとに限界耐力計算を行い、それらの持つ耐震性の程度について検討を行った。 構造実験に関しては、研究目的の趣旨に添った新たな実験対象を選定し、静的載荷実験を行うことにより構造特性を明らかにし、設計資料を整えることを目的に推進している。本年度は、伝統構法建物の主要な構造要素である通し貫を対象として、熊本で通常用いている仕様による仕口部(くさびなど)を持つ軸組について実験を行い、それらの持つ復元力特性や破壊性状を明らかにし、他の仕口仕様による軸組との比較を行った。 加えて、既存伝統構法建物の持つ耐震性能を、振動性状を変化させることなく向上させる要素として斜め貫構法を考案し、それらの耐震性能を明らかにするために、斜め貫仕口部の引張試験および斜め貫を含む耐震要素のせん断力載荷試験を行った。さらには、これらの結果から、伝統構法軸組の持つ性能に最も適する仕口の仕様、既存建物への斜め貫の施工方法等について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に基づき、全体的な研究推進のための枠組・フローの作成を行った。また、これに沿って構造調査および構造実験の双方について当面の計画を構築し、その一部について実施した。 調査および実験の実施数については当初予定よりはやや少な目となり、結果の取りまとめについても現段階ではやや不十分な部分があるが、来年度に十分挽回は可能であるため、「おおむね順調」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた構造調査の結果を基にして、熊本における伝統構法による建物の構造特性の中間分析を行うとともに、調査方法に改良を加えると共に、新たに対象建物を選定し調査データの補強を図る。また、天草地方等に存在する漁村型の建物や伝統構法による大規模な建築についても調査対象の選定を進め、可能なものから調査を行う。 構造実験に関しては、本年度の実験に加え、伝統構法の特長を生かした新たな耐震要素、および、既存伝統構法建物の耐震性向上に有効な要素の観点から、新たな要素の開発を行い、これを組み込んだ試験体を作成し、本年度同様に静的載荷実験によって、復元力特性や破壊性状等の構造特性を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度同様、構造調査および構造実験に関して、実験・調査補助およびデータ取りまとめに関して人件費・謝金と使用する予定である。また、次年度は地元設計者・施工者・林業関係者などの研究協力者との研究討議を行う予定であり、それに関しても謝金を使用する予定である。 構造実験に関しては、変位計などの計測機器を物品費として購入し、試験体制作費、材料費、ひずみゲージなどを消耗品等その他として支出する予定である。 旅費としては、他地域との情報交換のための旅行、研究回答への情報収集のための旅行等に利用する予定である。
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