平成26年度は、地域に即した木造建物に適用可能な耐震要素として提案された「木ずり漆喰壁」に関して、漆喰厚やきずり間隔などを変化させて実験を行い、実用的な仕様について検討を行った。「格子壁」については、これまでに行われていなかった格子サイズ・格子間隔を対象として確認実験を行い、これまでの実験結果と総合して耐震性能向上に適した仕様について検討を行った。また、めり込み理論式を応用して格子壁の耐力評価手法を構築するとともに、この計算結果を用いて限界耐力計算を行うことにより、様々な格子に適用可能な耐震設計プロセスを構築した。 地元の実務者・設計者との議論の中で課題とされた、吹き上げ力に対する軒の安全性評価については、地域で用いられている様々な垂木固定法を抽出し、吹き上げ力に相当する鉛直荷重を載荷する実験を行った。その結果を用いて想定される吹き上げ力に対する安全性の評価を行うとともに、垂木を留め付ける最適な仕様について検討を行った。 地域における木造建物の構造特性に関しては、本年度は熊本市近郊に存する公民館建築や農村部の数棟の建物を対象として追加の構造調査を行い、限界耐力計算により耐震安全性を確認するとともに耐震補強に関して検討を行った。 全期間を通じては、地元の実務者・設計者との議論などを踏まえて、地域の木造建物の耐震性能向上に関して効果的な耐震要素を見いだし、それについて構造実験を行い、最適な仕様の決定、該当する要素を用いた際の性能評価法の構築を行った。また、地域の存在する様々な木造建物の構造調査を行い、構造特性の大まかな特徴を明らかにし、それぞれに応じた耐震性評価法・耐震性向上方法の検討を行った。さらには、いぐさや杉材などの地域産材を木造建物居住空間や仮設住宅に適用する方法を検討し、その際の様々な性能を評価することを試みた。
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