研究課題
木質構造に大径のボルトや長ビスを用いて接合部する場合、それらを埋設する木材の繊維方向を組み合わせることで高い剛性と高い靭性を両得し、かつその特性を構造設計で都度重要視する性能、例えば剛性型か靭性型か制御できるか研究を進めてきた。従来、木質構造において接合部のエネルギー吸収能力は接合金物を降伏変形させることで得られてきたが、本研究では木材自体で接合部挙動を制御し構造設計に活かそうとしている。初年度は大径ボルト(径31φ、長さ300mm)を用いて木材繊維の平行と直行方向を組み合わせ高い剛性と靭性を両得した。2年目と最終年度はより汎用性のある接合部を目指し長ビス(径6φ,8φ、長さ170~290mm)を用いて実験を行った。なお、本研究は今後の国産材の有効活用に資すべく国産スギを用いてCLT試験体全てを自ら製作し実験データを得た。また、木材の割裂挙動を検証した材料実験においても国産材のスギ、ヒノキ、カラマツにてデータ取得した。木材繊維の組み合わせ比率をRp率(Ratio of parallel)として定義し、最終年度はそれをパラメータに数値解析および画像処理解析を重点的に進めた。Rp率は接合部にかかる木材繊維の平行方向の割合を示し、例えば、全ビスを繊維平行方向に挿入すると100%、全ビスが繊維直交方向だと0%、直交および平行方向に同数挿入すると50%となる。ビスの径と長さの組み合わせを変えRp率をパラメトリックに振って実験と解析により接合挙動を比較検証した。Rp率が上がるにつれて初期剛性は高くなり、逆に下がると繊維直交方向成分が増しビスに木材繊維が引っかかり靱性が高くなる。具体的な数値の例として、長ビスの場合、Rp率が10%下がると靱性は約4.4%増加した。初期剛性は節等の影響を受易いがRp率が上がれば高くなる傾向があった。実験値と理論値の誤差は約±12%以内の整合性であった。理論値よりRp率と剛性、靭性の増減についての関係式を提案した。
当研究室のホームページにて、研究活動報告および研究成果についても積極的に報告している。
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日本工業大学 研究報告
巻: 第45巻 第1号 ページ: 印刷中
Journal of Timber Engineering 木質構造研究会
巻: Vol.27 No.5 ページ: 161~166
http://www.nit.ac.jp/gakka/subject/kyoin7/arc_nasu.html
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