研究課題/領域番号 |
24560703
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
寺西 浩司 名城大学, 理工学部, 教授 (30340293)
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キーワード | フレッシュコンクリート / 調合 / 流動性 / 材料分離 / 粒度分布 / 実積率 / 骨材 / 余剰水膜理論 |
研究概要 |
昨年度の研究により、余剰水膜理論に基づく粒子分散距離(=粉体分散距離)を指標としてペーストの流動性を評価するためには、粉体の実積率の値を適切に測定する方法の開発が必要であることが明らかになった。そのため、本年度(2年目)の研究は、まず、各種の新しい実積率の測定方法を考案・試行し、その妥当性について検討した。そして、吸引法による粉体の実積率の測定値を用いると、ペーストの流動性を粒子分散距離により精度よく評価できることを明らかにした。さらに、粉体の実積率の測定値が得られない場合の粒子分散距離の計算方法を提案した。 次に、研究の第2段階として、余剰水膜理論をモルタルに拡張して適用することを考えた。すなわち、モルタルを粉粒体(=粉体+細骨材)と水で構成される固液2 相材料と見なし、その流動性をペーストの場合と同様に粒子分散距離により評価できるかを検討した。そして、拘束水比から求めた粒子分散距離により、モルタルの流動性を、粉粒体(=粉体+細骨材)の粒度分布や水粉粒体体積比にかかわらず、包括的に評価できることを明らかにした。 さらに、本年度の研究では、分離の程度が構成材料間の相対速度により表示されるとの立場から、モルタルと粗骨材間の分離を定量評価するための検討を行った。また、インターロッキングや振動下の粗骨材沈降などの各種の分離現象が本質的に同一の現象であるかを検討した。そして、①鉄筋間通過時の粗骨材の分離と加振による粗骨材の沈降の2 つの分離現象は同じ現象とはいえない、②既存の分離評価試験である円筒貫入試験は、主に、加振による粗骨材沈降のような分離現象の生じやすさを評価している、などの知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ペーストに対する余剰水膜理論の適用性に関する検討の過程で、ペーストの流動性に対する化学混和剤の影響を合理的に評価するためのアイデアを得たが、本年度は、このことに対して十分な検討を行う時間的余裕がなかった。また、モルタルに対する余剰水膜理論の適用性に関する検討では、本年度は、未だ限定的な条件の範囲でしか実験を行っておらず、より広範な条件下での実験が必要と考えられる。これらは、次年度への積み残し課題となる。ただし、全体としては、本年度の研究計画を、概ね予定通りに達成することができたものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
①粉粒体(=セメント粒子+細骨材+粗骨材)の粒度分布とコンクリートのワーカビリティーの関係の検討: 研究の第3 段階として、コンクリートへの余剰水膜理論の適用性を調べるための検討を行う。そして、粉粒体(=セメント粒子+細骨材+粗骨材)の粒度分布とコンクリートの流動性、レオロジー性質および分離抵抗性との関係について検討し、さらに、これらの関係のモデル化に関する考察を行う。 ②コンクリートの流動性を最適化する粉粒体の粒度分布の検討: コンクリートの流動性を最適化できるような粉粒体の粒度分布(すなわち、使用するセメントの粒度分布に対応し、かつ、所定の流動性を保持したコンクリート中の骨材量を最大にできるような細・粗骨材の粒度分布)を見出すための検討を行う。 ③コンクリートの材料分離の定量評価に関する検討: コンクリートの材料分離の程度が構成材料間の相対速度により表示されるとの立場から、より広範な条件下で、本年度と同様に、モルタルと粗骨材間の分離を定量評価するための検討を行う。 ④調合設計に関する歴史の調査: 本研究でより合理的な調合設計法を最終的に提案するための基盤とするために、我が国のコンクリートの調合設計法の変遷に関する文献調査を行う。 ⑤実験結果を踏まえたコンクリートの調合設計法および品質管理法の提案: 本研究の成果を反映させた、使用セメントおよび骨材の粒度分布を適切に考慮できるようなコンクリートの調合設計法を提案する。また、レディーミクストコンクリート工場において、セメントや細・粗骨材の粒度分布の日間・日内変動があった場合などに、コンクリートの調合を適切に調整できるような品質管理法を整備する。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していたよりもやや実験数が少なくて済んだため。 次年度はより多くの実験数を予定しているため、その消耗品費として使用する。
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