研究課題/領域番号 |
24560705
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
稲田 達夫 福岡大学, 工学部, 教授 (80580175)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 木質材料 / 複合構造 / 木床 / 集成材 / 鉄骨構造 / 地球環境問題 / 木材活用促進 / CLT |
研究概要 |
環境共生材料である木材の活用推進と、過剰に蓄積した人工森林資源の積極活用を目的として、鉄骨造建物に木床を適用することの可能性について検討を行った。 今年度は、特に建築構造工学の観点からの妥当性の検討を行った。具体的には、杉角製材(生材)を実験用試験体として購入し、複数本の製材をエポキシ系接着剤により接着集成することにより、実大の木床試験体を作成、クリープ試験、静的載荷試験を実施した。次に、木床と鉄骨梁の接合方法について検討を行い、新たに接合工法を考案、1/2の縮小試験体により、その工法の妥当性の検討を行った。 結果として今年度判明したことは以下である。 クリープについては、床厚を200mm程度にすることで、許容応力度について充分の余裕が生じることから、クリープ変位は比較的早期に収束することが分かった。但し、生材を使用したため、乾燥過程において、温度・湿度の変化により割れ等が発生し、製品化を考える上で、課題を残した。コスト的には生材がベストと思われるが、製品としての品質を考慮すると、乾燥材についても今後検討を行うべきである。載荷能力については、床厚を200mmとすることで、床材として充分な性能が確保可能なことが分かった。仮に接着面の剥離等が起こったとしても、載荷能力としては問題無いことも分かった。木床と鉄骨梁の接合についても、コンクリート床の場合と同様の合成梁としての効果も確認でき、十分な性能が確保されていることが分かった。 その他、木床にすることのメリットとして、LCCO2の観点からの環境性能の改善と、建物の軽量化による建物固有周期の制御の可能性等について、解析的な検討を行った。いずれについても良好な結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね、今年度当初の研究目的は達成できたと考えている。理由としては、主として実大実験により、鉄骨造建物に木床を適用することの、妥当性が確認できたこと、および解析的検討により、構造的・環境的メリットが確認できたことが上げられる。特に生材を使用した場合には、コンクリート床に対し、コスト的メリットもあり、また乾燥材を使用した場合についても、軽量化等の総合的メリットを勘案すれば、充分コスト的にも成立することについて、ほぼ確認できたことは大きいと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、乾燥材および最近国内に新たに導入されるつつあるクロスラミナティンバー(CLT)について、昨年度と同様の検討を進め、各材料について床材適用のメリットデメリットを比較検討する。そして、その検討結果を踏まえ、新たな床用集成材の開発検討を行う。一方、超高層建物を想定し、S造建物に木床を適用した場合の固有周期制御の可能性と、軽量化による本体構造の鋼材量削減について、さらに詳細な解析的検討を行い、木床のメリットを明確化する。 併せて、林産学の専門家、製材業者、木床の需要家等とも連携を図ることにより、木床の普及促進についての体制造りにも着手する。 構造性能以外の課題として、耐火性能についても、検討を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、27000円程度を繰り越したが、額としては軽微であり、概ね全額を消費したと考えている。次年度は、昨年同様、実験試験体の購入と、情報収集のための旅費に充当することを考えている。木床の普及促進を意図した研究会の開催や、意見聴取のための専門家の招聘についても、使用したいと考えている。
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