研究課題/領域番号 |
24560706
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
堺 純一 福岡大学, 工学部, 教授 (30215587)
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研究分担者 |
田中 照久 福岡大学, 工学部, 助手 (90588667)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 耐震設計 / 弾塑性変形性状 / 鋼コンクリート合成構造 / 合成効果 |
研究概要 |
地震国である我が国においては,高い耐震性能を保持し,かつ建設に伴う消費エネルギーの低減を目指した建築構造部材を開発することが望まれている.鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)構造は高い耐震性能を保持するが,施工工事作業量が多いなど解決すべき課題がある.筆者らはSRC構造の特徴である高耐震性能のさらなる向上と建設時の省力化を目指し,主筋およびせん断補強筋を省き,十字鉄骨を用いた,鉄骨フランジ面を一辺とする八角形断面の鋼コンクリート(SC)合成部材を提案し,その耐震性能を調べている. 平成24年度は,鉄骨によるコンクリートの拘束効果を調べるために17体の中心圧縮試験体を製作し,中心圧縮実験を行った.実験変数には,鉄骨フランジの幅と板厚,コンクリート強度(30,60,90N/mm2級の圧縮強度)を選んだ.実験および解析を行った結果,薄肉鋼管でコンクリートを覆った場合に比べると拘束効果は弱くなるが,八角形のSC断面でも,鉄骨によるコンクリートの拘束効果がある程度期待できることがわかった.さらに,鉄骨フランジの幅の違いは,この拘束効果にはほとんど影響しないことも明らかとした. 本年度はさらに,八角形断面の柱試験体を10体製作した.実験変数は,コンクリート強度(30,60N/mm2級の圧縮強度)と軸力比(断面圧縮耐力の30%と60%の軸力)および鉄骨フランジの幅厚比である.今年度は30N/mm2級の5体の試験体に一定軸力と繰り返し水平力を載荷する実験を行った.実験を行った結果,軸力比0.6の高軸力下でも,本SC柱は塑性変形能力に優れた弾塑性挙動を示すことがわかった.また,鉄骨フランジの幅厚比を10程度にしておけば,鉄骨フランジ幅の違いによる挙動の違いはほとんどないこと,幅厚比が20程度となると,耐力発揮後の抵抗力の低下が大きくなることを明らかとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の実施計画では,SC柱試験体の中心圧縮実験を行い,内蔵鉄骨の幅厚比およびフランジ幅がコンクリートの拘束効果に及ぼす影響を調べることを目的としており,当初の計画通りに,コンクリートの拘束効果を明らかにした.さらに,一定軸力と繰り返し水平力を作用させる柱試験体を10体製作し,5体の載荷試験を行ったことから,当初の計画より,この点は当初の計画より進めることができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,平成24年度に製作して,未だ載荷していない5体の柱試験体に一定軸力と繰り返し水平力を載荷する実験を行い,実験データを分析して,コンクリート強度の違いがSC柱材の弾塑性挙動に及ぼす影響を調べる.さらに,実験および解析結果の分析を行い,SC柱の弾塑性挙動に影響を及ぼす因子を抽出し,新たに柱試験体の製作を行い,今年度中に載荷実験を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
・繰越金が発生した状況は,初年度購入を予定していたパソコン一式を平成25年度(2年目)購入に変更したことと,柱試験体の製作個数を当初の予定より減じたことによる.柱試験体個数を減じた理由は,平成24年度に行ったパイロットテストの結果を踏まえ,柱の実験変数を再考し,SC柱の耐震性能をより詳細に調査するために,平成25年度に柱試験体の製作を行うことに変更したものである. ・平成24年度の繰越金を含めた,25年度の研究費の使用計画は以下のとおりである. 物品費:1,774千円(パソコン一式,試験体製作費,歪みゲージ購入費),旅費:420千円,謝金:0千円,その他50千円(論文投稿費用),計2,244千円である.
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